日本のロックギターの歴史をさかのぼると、多くの道がChar(チャー)にたどり着きます。10代でスタジオの現場に立ち、ソロ、トリオ、アコースティック・デュオと形を変えながら、半世紀近く第一線で弾き続けてきたギタリストです。

ギタリスト名鑑の第6回はChar。代表曲の紹介ではなく、現役プロ講師の視点で「なぜCharのギターは”歌って”聴こえるのか」「その考え方を普段の練習にどう落とし込むか」を分解していきます。テクニックの印象が強い人ですが、実はリズムとコードの扱い方にこそ、初心者〜中級者が学べるヒントが詰まっています。

プロフィール|10代でプロの現場に立った「日本のギターヒーローの原点」

Char(本名・竹中尚人)は1955年6月16日、東京都品川区戸越の生まれ。7歳でピアノ、8歳でギターを始め、ベンチャーズからクリーム、ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベックへと興味を広げていきました。そして中学3年生でスタジオ・ミュージシャンの仕事を始めたという、早熟なキャリアの持ち主です(出典:ギター・マガジンWEB「Charの略歴と必聴曲を紹介!」)。

高校時代にはスモーキー・メディスンなどのバンドで注目を集め、1976年6月にシングル「NAVY BLUE」でソロデビュー。同年9月に1stアルバム『Char』を発表し、1977年の「気絶するほど悩ましい」「逆光線」、1978年の「闘牛士」で広く知られる存在になりました(出典:Wikipedia「Char」)。

その後は1978年にジョニー吉長・ルイズルイス加部とJohnny, Louis & Charを結成(1981年にピンククラウドへ改名)。1991年からは石田長生とのアコースティック・デュオBAHO、1992年からはバンドサイケデリックスと、編成を変えながら活動を続けてきました。フェンダー・ムスタングの評価を日本で決定づけた人物としても知られ、フェンダーからはシグネチャーモデル「Char Mustang」も発売されています(出典:FenderNews「Interview | Char」)。

経歴の読みどころは、「スタジオの職人」からスタートしているという点です。歌の後ろで何を弾けば曲が良くなるかを、10代のうちから現場で叩き込まれている。この伴奏者としての耳が、ソロでもトリオでも崩れない彼のギターの土台になっています。

奏法・音作りの特徴

① リズムギターが「主役」になる右手

Charの演奏を聴いてまず耳に残るのは、ソロよりもバッキングの気持ちよさです。コードを刻む右手が止まらず、空ピッキング(弦に当てずに振る動き)を含めて常に一定のリズムで動いている。だから音数が少ない場面でもグルーヴが途切れません。

レッスンで「リズムが走る・もたつく」という相談を受けたとき、原因の多くは弾かない瞬間に右手が止まっていることです。Charのようなバッキングに近づく第一歩は、難しいコードより先に「右手の振り子を止めない」ことを体に入れること。テンポの取り方はBPMとメトロノームの使い方も参考にしてください。

② コードの「上半分」で色を付ける

Charのバッキングは、6本の弦を全部鳴らすジャカジャカ型ではなく、高音側の3〜4本だけで響きを作る場面が多いのが特徴です。セブンスやナインスのような少し複雑な響きも、全部を押さえるのではなく「色を決める音だけ」を抜き出して鳴らしています。

この発想は、バンドでギターが埋もれる・うるさくなるという悩みの特効薬です。低音はベースに任せ、ギターは上の帯域で色を付ける。セブンスコードの基本形はセブンスコードとは|3種類の違いと押さえ方にまとめてあります。まずここから「上の3本だけ」を抜き出すと、Charらしい軽やかな響きに近づきます。

③ ブルースを土台にした「歌う」ソロ

Char自身がヘンドリックスやベック、クラプトンからの影響を公言している通り、ソロの土台はブルースです。ペンタトニックを中心に、チョーキングで音程を「探しにいく」ような歌い方をし、フレーズの語尾をビブラートで締める。速さより1音ごとの表情で聴かせるタイプのソロです。

ここで真似したいのは、フレーズを「文」として区切る感覚。弾きっぱなしではなく、言い切ったら一度休む。休符があるから次のフレーズが「返事」のように聴こえます。指板の基本はペンタトニックスケールの使い方、音程の作り方はチョーキングのコツで解説しています。

④ ムスタングという「クセのある楽器」を武器にする

Charの代名詞であるフェンダー・ムスタングは、もともとは学生向けのモデルとして生まれたギターで、ストラトキャスターなどに比べてスケール(弦長)が短いのが特徴です。弦の張りが柔らかくチョーキングしやすい一方、音の輪郭はストラトとは違う独特のもの。※使用機材は時期によって異なり、ストラトキャスターやレスポールなども使っています。

学ぶべきは「ムスタングを買うこと」ではなく、自分の楽器のクセを理解して、その長所で勝負するという姿勢です。ピックアップの切り替えやボリュームの位置だけでも、同じギターから驚くほど違う音が出ます。セレクターの考え方はピックアップセレクターの使い方を参考にしてください。

⑤ トリオでもアコースティックでも成立する「1本で完結する」設計

ギター・ベース・ドラムのトリオ(ピンククラウド)と、ギター2本のアコースティック・デュオ(BAHO)。まったく違う編成で活動してきたことが、Charのギターの特徴をよく表しています。ギター1本でリズム・コード・メロディを行き来できるから、どの編成でも音が薄くならないのです。

弾き語りの方にも、バンドの方にも通じるポイントです。「コードを弾く人」「ソロを弾く人」と役割を分けて練習するのではなく、バッキングの合間に短いフレーズを挟む練習をしておくと、演奏の厚みが一気に変わります。

聴くべき作品

  • Char『Char』(1976)|ソロデビュー・アルバム。20歳前後にしてすでに完成されたバッキングとソロのバランスを確認できる原点の1枚です。
  • シングル「気絶するほど悩ましい」「逆光線」(1977)、「闘牛士」(1978)|歌ものの中でギターがどう「色付け」をしているかに注目して聴くと、②のコードワークの発想がよく分かります。
  • Johnny, Louis & Char『FREE SPIRIT』(1979)|1979年7月14日、日比谷野外音楽堂でのフリーコンサートを収めたライブ盤。トリオ編成でギター1本が何を担っているかを聴き取る教材として最適です(参考:HMV&BOOKS online)。
  • BAHO(石田長生とのデュオ)の作品群|アコースティックギター2本だけで、リズムとメロディをどう分担しているか。エレキ派の方にこそ聴いてほしい演奏です。

Charに学ぶ練習ポイント3つ

① 「空ピッキング込み」の16分ストロークを1分間止めない

コードは1つ(例:Eのセブンス)で構いません。BPM70前後で右手を16分で振り続け、実際に鳴らすのは数か所だけ、残りは弦に当てずに空振りします。1分間、右手のリズムが一度も止まらなければ合格。これがCharのバッキングの「揺れない土台」を作る一番の近道です。

② いつものコードを「上の3本だけ」で弾き直す

普段弾いている曲のコード進行を、1〜3弦だけで弾いてみてください。押さえ方が分からないコードは、ローコードやバレーコードの形から高音側だけを残せばOKです。音が軽くなった分、リズムの切れで聴かせる必要が出てくる——この感覚こそが目的です。

③ 「2小節弾いて2小節休む」アドリブ練習

ブルース進行のバッキング音源に合わせ、ペンタトニックで2小節弾いたら必ず2小節休むルールでアドリブします。休んでいる間に次のフレーズを「どう返すか」を考えるのがポイント。フレーズが会話のように聴こえ始めたら、Charの「歌うソロ」に一歩近づいています。考え方はギターアドリブの基本でも詳しく解説しています。

まとめ

Charから学べる最大のことは、「ギターは、まずリズム楽器である」ということです。止まらない右手、上の弦で色を付けるコードワーク、休符で区切る歌うソロ、自分の楽器のクセを活かす姿勢——どれも速弾きとは別の次元にある、演奏の土台の話です。

だからこそ、初心者の段階から意識する価値があります。「ソロが弾けるようになってから」ではなく、今日のコード練習から右手の使い方を変えてみてください。いつもの曲が、驚くほど気持ちよく聴こえ始めるはずです。

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「コードは押さえられるのに、演奏がのっぺりする」「アドリブがスケールの上り下りになってしまう」——こうした詰まりは、右手とフレーズの区切り方を少し変えるだけで解けることが多いです。ひとりで悩む前に、気軽にご相談ください。

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