BPMは「1分間に拍がいくつ入るか」を表す数字で、メトロノームはその拍を音で鳴らしてくれる道具です。練習が伸び悩む原因の多くは、指が動かないことではなく、テンポが一定に保てていないことにあります。速く弾くために使う道具ではなく、まず「一定で弾けているか」を確認するために使うのがメトロノームです。この記事では、BPMの意味、メトロノームの合わせ方、テンポの上げ方の手順、つまずきやすい点までを順番に解説します。
BPMとメトロノームとは(役割・仕組み)
BPMはBeats Per Minuteの略で、日本語では「1分間あたりの拍数」です。BPM60なら1分間に60回、つまり1秒に1回のペースで拍が刻まれます。BPM120ならその倍の速さで、0.5秒に1回です。楽譜やTAB譜の左上に「♩=120」と書かれている数字が、この曲を演奏するときの基準テンポを表しています。
メトロノームは、設定したBPMどおりに「カチ、カチ」と音を鳴らし続ける道具です。振り子が左右に振れる機械式のもの、電池やUSBで動く電子式のもの、スマートフォンのアプリなど、形はさまざまですが役割は同じです。多くの機種では拍子(4拍子・3拍子など)も設定でき、小節の1拍目だけ違う音が鳴るアクセント機能がついています。
なぜこの道具が必要なのでしょうか。理由は、人は自分のリズムのズレを、弾いている最中には自覚できないからです。難しいフレーズにさしかかると自然に遅くなり、簡単なところでは速くなります。本人の感覚では一定に弾けているつもりでも、あとで録音を聴くと大きく揺れている、ということが起こります。メトロノームは、この「自分では気づけないズレ」を、その場で耳に見せてくれる基準線の役割を果たします。
曲のテンポの目安としては、ゆったりしたバラードでBPM60〜80、一般的なポップスでBPM100〜130、速いロックの曲でBPM150以上、といった幅があります。ただしこれは大まかな傾向で、実際のテンポは曲によって異なります。練習する曲の正確なテンポは、楽譜の指定を確認してください。
メトロノームの使い方・実践
まずは、いちばん簡単なところから始めます。テンポをBPM60〜70に設定し、拍子は4拍子にします。この状態でメトロノームを鳴らし、ギターを持たずにクリックに合わせて手拍子を打つところから入ってください。手拍子とクリックが重なって、クリック音が聞こえにくくなる状態が理想です。ここがずれていると、楽器を持ってからはもっとずれます。
手拍子で合うようになったら、ギターを持ちます。最初は開放弦(左手を使わずに弾く弦)を、1拍に1回ダウンピッキングで鳴らすだけにします。指を動かす要素をなくして、右手とクリックだけの関係に集中するためです。これが安定したら、1拍に2回(8分音符)、1拍に4回(16分音符)と細かくしていきます。
次の段階が、実際のフレーズやコードでの練習です。ここでの手順は次のとおりです。
- 弾けるテンポを探す:まず目標のテンポで弾いてみて、崩れるなら10〜20BPM下げます。3回続けてミスなく弾けるテンポが、そのときの「今のあなたのテンポ」です
- そのテンポで反復する:弾けるテンポで正確に繰り返します。ミスを含んだまま速く弾く練習は、ミスの練習になってしまいます
- 5BPMずつ上げる:3回続けて成功したら5上げる。崩れたら一段戻す。この上げ下げを繰り返します
- 1回の練習で欲張らない:1日で目標テンポに届かなくて当然です。数字が少しずつ上がっていく記録そのものが、上達の証拠になります
もう一つ、慣れてきたら試してほしい使い方があります。クリックを2拍目と4拍目だけに鳴らす方法です。BPMを半分に設定し、その音を1拍目ではなく2拍目・4拍目として感じます。ポップスやロックでスネアドラムが入る位置がここなので、バンドの中でのリズムの感じ方に近づきます。1拍目でクリックが鳴らないぶん、自分でテンポを保つ必要があり、リズムが不安定な箇所がはっきり見えてきます。
練習での活かし方
メトロノームの本当の価値は、練習の記録がとれることにあります。「なんとなく弾けるようになった気がする」ではなく、「先週はBPM75、今週は90」と数字で残るからです。練習ノートやスマートフォンのメモに、曲名とその日に到達したテンポを書いておくだけで、進み具合が客観的に見えます。数字が動かない週があれば、練習の量ではなく方法を変えるべきサインだと判断できます。
フレーズの中で特定の場所だけ崩れる場合は、その部分の前後2拍だけを切り出して、そこだけメトロノームに合わせて繰り返してください。曲を頭から通して弾く練習は、達成感はありますが、弾けない箇所を弾けないまま通過する時間が増えます。崩れる場所を特定して、そこだけを取り出すのが効率のよい進め方です。
コードチェンジの練習にも向いています。たとえば4拍ごとにコードを1つ変える設定にして、Cを4拍、Gを4拍、と繰り返します。ここで大切なのは、「押さえ替えが間に合わなくても、拍は絶対に止めない」ことです。間に合わない拍は音が出なくてもかまいません。テンポを止めずに次のコードへ行く習慣がつくと、実際に曲を弾いたときの止まりが減ります。
なお、メトロノームは「常に使うもの」ではありません。表現をつけて歌うように弾く練習や、音色を作り込む練習では外してかまいません。使うのは、正確さを確認したいとき、テンポを上げたいとき、リズムが怪しい箇所を洗い出したいときです。目的をもって出し入れするほうが、練習全体としては効果が出ます。
よくある失敗と注意点
- 速いテンポばかりで練習する:弾けないテンポでの反復は、ミスと力みを一緒に覚えます。遅いテンポで正確に弾けることのほうが、はるかに価値があります
- クリックが聞こえない音量で使っている:ギターの音にかき消されると、合わせているつもりでずれます。音量を上げるか、音色を高めの電子音に変えてください
- クリックを追いかけてしまう:音を聞いてから弾くと必ず遅れます。次の拍が来る位置を予測して、そこに向けて動くのが正しい感覚です
- ずれた瞬間に止まってしまう:ずれても止めずに、次の1拍目で合流し直す練習をしてください。実際の演奏で必要になるのは、この立て直す力です
- テンポを一気に上げる:5BPMずつが目安です。大きく上げると、弾けていない部分をごまかす癖がつきます
もう一点、注意しておきたいことがあります。メトロノームに合わせられないことを「リズム感がない」と結びつけてしまう方が多いのですが、これは多くの場合、正確ではありません。合わない原因のほとんどは、テンポ設定が速すぎるか、運指がまだ固まっていないかのどちらかです。テンポを十分に落として手拍子で合うなら、リズムの問題ではありません。切り分けて考えてください。
独学でつまずきやすいのも、まさにこの切り分けの部分です。原因が右手なのか、左手なのか、テンポ設定なのか、自分の演奏を客観的に聴き分けるのは簡単ではありません。当教室のレッスンでも、生徒さんの演奏を聴いて「今ずれているのはここで、原因はこちら」と具体的に示すところから始めます。
よくある質問(FAQ)
メトロノームに合わせられません。どうすればいいですか?
まずテンポを大きく落としてください。BPM60前後まで下げて、開放弦を1拍ずつ弾くだけの練習に戻します。合わないと感じるときは、たいてい「クリックが聞こえていない」か「テンポが速すぎて指が間に合っていない」かのどちらかです。音量を上げる、音色を高めの電子音に変える、足で拍を踏む、といった対処で改善することが多いです。それでも合わないときは、弾くのをやめてクリックに合わせて手拍子だけをしてみてください。手拍子で合うなら、原因はリズム感ではなく運指のほうにあります。
テンポはどのくらいのペースで上げればいいですか?
5BPMずつが目安です。たとえばBPM70で3回続けてミスなく弾けたら75に上げる、という進め方をします。一度に20も30も上げると、弾けていない部分をごまかしたまま速く弾く癖がつきます。上げてみて崩れたら、素直に一段戻してください。戻すのは失敗ではなく、正しい手順です。曲の練習では、最終目標のテンポの7割程度から始めると無理がありません。
スマホの無料メトロノームアプリでも大丈夫ですか?
十分です。テンポ(BPM)が数字で設定できて、拍子とアクセントが変えられれば、練習用としては問題ありません。専用機のほうが操作は速く、音の立ち上がりも明確ですが、まず始める段階でこだわる必要はありません。アンプやオーディオ機器と一緒に使う場合や、ほかの楽器と合わせる場面が増えてきたら、専用機や機材との同期ができるものを検討するとよいでしょう。
まとめ
BPMは1分間の拍数、メトロノームはその拍を鳴らして基準を示す道具です。使い方の要点は、速く弾くためではなく、一定に弾けているかを確認するために使うこと。手拍子から始めて、開放弦、フレーズと段階を踏み、3回成功したら5BPM上げ、崩れたら一段戻す。この繰り返しが、遠回りに見えていちばん確実な方法です。到達テンポを記録していけば、上達が数字で見えるようになります。リズムが不安定だと感じている方こそ、一度テンポを大きく落としたところからやり直してみてください。
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