ロックギターの「リフ」という言葉を世の中に定着させた人物を一人挙げるなら、ジミー・ペイジ(Led Zeppelin)でしょう。ギター1本で曲全体を動かしてしまう発想、そしてスタジオでの音の作り方——その両方で、後のロックの標準を作ったギタリストです。
ギタリスト名鑑の第5回はジミー・ペイジ。速さやテクニックの話ではなく、現役プロ講師の視点で「なぜあのリフはあれほど強いのか」「その考え方を生徒さんの練習にどう落とし込めるか」を分解していきます。実はペイジのプレイには、初心者・中級者が今日から真似できる考え方がたくさん詰まっています。
プロフィール|スタジオミュージシャンからバンドの設計者へ
ジミー・ペイジは1944年1月9日、イギリス生まれのギタリスト/作曲家/プロデューサー。10代からロンドンでセッションギタリストとして数多くのレコーディングに参加し、その後1966年から1968年までザ・ヤードバーズに在籍しました(出典:Wikipedia「ジミー・ペイジ」)。
ヤードバーズの終幕後、1968年にレッド・ツェッペリンを結成。同年9月の初ライブは「ニュー・ヤードバーズ」名義で行われたと伝えられています(出典:Rolling Stone Japan「レッド・ツェッペリンが誕生するまでの物語」)。ペイジはギタリストであると同時にバンドのリーダーであり、プロデューサーでもありました。
この経歴の読みどころは、「弾く人」になる前に「録る人」だったという順番です。セッションマン時代に、どう弾けば曲が良くなるか・どう録れば音が生きるかを徹底的に見てきた。だからこそ彼のギターは、上手さを見せる方向ではなく曲を成立させる方向に振り切れています。
奏法・音作りの特徴
① リフは「隙間」で作られている
ペイジのリフをコピーすると、多くの方が「音は合っているのに重くならない」と感じます。理由は音の数ではなく休符の置き方です。彼のリフは、鳴らしている時間より鳴らしていない時間の設計が緻密で、そこに歌もドラムも入り込めるようになっています。
練習でやるべきことははっきりしています。音を切る責任は右手にある、という意識を持つこと。左手の力を抜いて弦に触れるだけでも音は止まりますが、リフの輪郭を作るのはピッキング側のミュートです。詳しくはミュートの種類と使い分けにまとめています。
② パワーコードを「コード」ではなく「効果音」として使う
ペイジのバッキングは、教科書的なコードストロークとは発想が違います。2音のパワーコードに開放弦を混ぜたり、同じ形を平行移動させたりして、和音の名前より響きの塊として扱う場面が多い。ロックギターが「コード進行を伴奏する楽器」から「サウンドそのものを作る楽器」へ変わった分岐点が、ここにあります。
初心者の方にとって朗報なのは、これが難しい押さえ方をほとんど必要としないことです。押さえる指は2〜3本。あとは鳴らす位置とタイミングの問題です。基本形はパワーコードとは|押さえ方とコツで確認してください。
③ 変則チューニングという「別の楽器」
ペイジはオープンチューニングやDADGAD(6弦から D-A-D-G-A-D)を積極的に使ったギタリストとしても知られます。1961年製のダンエレクトロをDADGADに合わせて「White Summer」「Black Mountain Side」「Kashmir」などで使用したと紹介されています(出典:エレキギター博士「Jimmy Pageの使用機材」)。※機材や使用曲の詳細は時期・情報源によって記述が異なる場合があります。
変則チューニングの本質は「難しいテクニック」ではなく、開放弦が鳴り続ける状態を作ることです。指を1本ずらすだけで、自分では思いつかない響きが出る。行き詰まったときの発想転換として非常に有効なので、中級者の方にはぜひ試してほしい引き出しです。なお、変則チューニングを扱うときはチューナー選びが実用面で効いてきます(参考:ギターチューナーの種類と選び方)。
④ 音作りは「歪み」ではなく「空気」で作る
ツェッペリンのギターは音が大きく聴こえますが、実際には極端に歪んでいるわけではありません。ペイジがこだわったのは、アンプに近づけたマイクと離したマイクを組み合わせ、部屋の響きごと録るという発想でした。距離が奥行きを作る、という考え方です。
自宅練習に置き換えるなら、ゲインを上げる前にリバーブとディレイの使い方を見直すのが近道です。歪みを増やすと音は細くなり、バンドでは埋もれます。空間系の考え方はディレイの使い方が参考になります。
⑤ テレキャスターからレスポールへ——機材が変えた役割
ペイジといえばギブソン・レスポールのイメージですが、初期はフェンダー・テレキャスターを使用し、1959年製レスポール・スタンダード(通称「Number One」)は1969年以降に主軸となったと紹介されています(出典:エレキギター博士「Jimmy Pageの使用機材」)。
この変化は好みの問題ではなく役割の変化です。単線的で鋭いテレキャスターから、太く長く伸びるレスポールへ。バンドが大きな音像を必要とするようになったとき、彼は楽器のほうを合わせにいった。「やりたい音楽が先、機材は後」——これは機材選びで迷っている方に、いつもお伝えしていることでもあります。
聴くべき作品
- Led Zeppelin『Led Zeppelin』(1969)|荒々しさとブルースの要素が最も生な1枚。ギターの「間」の使い方が分かりやすい。
- Led Zeppelin『Led Zeppelin II』(1969)|リフ主導の曲作りが確立した作品。ロックギターの教科書として最初に聴くならここ。
- Led Zeppelin『Led Zeppelin IV』(1971)|アコースティックとエレキの配置が完成した代表作。多重録音の設計が学べます。
- Led Zeppelin『Houses of the Holy』(1973)|音色の幅が一気に広がった時期。ギターの役割分担が巧みです。
- Led Zeppelin『Physical Graffiti』(1975)|変則チューニングやリズムの実験が最も濃い1枚。中級者以上に発見が多い作品です。
ジミー・ペイジに学ぶ練習ポイント3つ
① 「半分の音数」でリフを弾き直す
いま練習している曲のリフを、音数を半分に減らして弾いてみてください。減らしても曲として成立する音が「芯」、消えても困らない音が「飾り」です。ペイジのリフが強いのは、芯の音だけで組まれているからです。この作業は、自分の手癖を客観視する練習にもなります。
② 同じリフを「裏拍始まり」でもう一度弾く
4拍子の頭から始まるリフを、意図的に半拍うしろにずらして弾いてみます。手が止まる人は、リズムを「形」で覚えている証拠。ペイジのリフの重さは、この裏拍の使い方から生まれています。拍の数え方に不安がある方は拍子とリズムの基本から確認してください。
③ ソロを「歌えるか」でチェックする
ペイジのソロは、完璧に整っているわけではありません。それでも記憶に残るのは、フレーズが歌になっているからです。自分のアドリブを録音して、あとから口ずさめるか試してみてください。歌えないフレーズは、指が動いただけで音楽になっていない可能性があります。土台になるスケールはペンタトニックスケールとはで解説しています。
まとめ
ジミー・ペイジから学べる最大のことは、「ギターの仕事は、上手く弾くことではなく曲を成立させること」という視点です。休符で作るリフ、響きとして扱うパワーコード、変則チューニングという発想転換、歪みではなく空気で作る音——どれも派手なテクニックではなく考え方の話です。
だからこそ、これらは初心者・中級者の段階から取り組めます。「速く弾けないから自分には無理」と感じている方こそ、ツェッペリンのリフを“鳴らしていない時間”に注目して聴き直してみてください。練習の方向が一段はっきりするはずです。
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