GLAYといえば、王道のメロディを思い浮かべる方が多いはずです。ところが耳をギターに向けると、きれいな歌の横でどこか鋭く、少しいびつな音が鳴っていることに気づきます。その音を担当しているのがHISASHIです。

ギタリスト名鑑の第12回はHISASHI。現役プロ講師の視点で「なぜ王道の歌ものの中で、あのギターが効くのか」「その考え方を普段の練習にどう活かすか」を分解していきます。キーワードは尖り・歪みの重ね方・打ち込みとの融合です。

プロフィール|函館で育ち、GLAYのもうひとつの顔へ

HISASHIは1972年2月2日生まれ、青森県弘前市の出身で、北海道函館市育ち。高校の同級生だったTAKUROと出会い、1989年にGLAYへ加入しました(出典:Wikipedia「HISASHI」)。影響源には日本のインディーズパンク、ハードコア、メタル、UKパンクが並び、アニメなどのサブカルチャーへの愛好でも知られています。

GLAYの楽曲の多くはTAKUROが書いていますが、HISASHI自身も作曲者です。代表的なところでは「JUSTICE [from] GUILTY」「デストピア」「会心ノ一撃」、そして2026年の64thシングル「汚れた英雄」など。YouTube「HISASHI TV」ではGLAYの楽曲やギターの解説もしています。

奏法・音作りの特徴

① 温かいバラードにも「鋭角」を残す

HISASHIのギターを理解するうえで一番わかりやすいのが、本人の「温かみのある曲にも尖った部分を残す」という考え方です。鋭いカッティング、急に展開するソロなどを例に挙げ、レディオヘッド「Creep」のサビ前のカッティングのようないびつさが、かえって曲の意味を強めるという趣旨の話をしています(出典:Real Sound 2017年インタビュー)。

ただし、これは「好き勝手に弾く」ことではありません。同じインタビューでは歌の邪魔をしないこと、曲に必然的な音を選ぶことも強調しています。歌の隙間で一瞬だけ切り込むには、音を切る技術が欠かせません。基本はミュートの種類と使い分けで確認できます。

② 歪みの上にさらに歪みを重ねる

音作りで印象的なのが、歪ませたギターの上から、さらにSansAmp(サンズアンプ)で歪ませるという手法です。荒れた質感そのものを音色として使う発想です。HISASHIはピッキングハーモニクスを好むことでも知られ(出典:Wikipedia)、鋭い倍音もこの「尖り」の一部です。歪みの量の考え方はオーバードライブの使い方で解説しています。

③ 早くからPCと打ち込みをギターの隣に置いた

HISASHIの「デジタルとロックの融合」は最近始まった話ではありません。本人によると、「グロリアス」の時代には小さなアパートでMac(Performa)を使い、TAKUROの持ってきた曲の骨格をMIDIで打ち込んでいたといいます(出典:Real Sound 2021年インタビュー)。

その延長線上にあるのが「汚れた英雄」です。00年代のミクスチャーロックの要素を取り入れ、ドラムのトリガーやギターのシーケンスまで使いながら、結果としてGLAYの音になった曲だと語られています(出典:Real Sound 2026年インタビュー)。また、使用機材にはギターシンセのRoland G-707も挙げられ、ギター以外にターンテーブルやテルミンも扱います。「ギターの音」に閉じこもらない姿勢がよく表れています。

④ レコーディングで音を「作り込む」

HISASHIはライブよりレコーディングのほうが好きだと語っています。録音ならではの工夫として挙げているのが、セクションごとにギターを変える、ピックアップを交換する、オクターブのフレーズで厚みを出す、フレットノイズをループさせて使うといった方法です(出典:Real Sound 2024年インタビュー)。

メインギターはZEMAITISやTokaiのTalboなどが知られますが(出典:Wikipedia)、機材名より「どの場面にどの音を置くか」という発想に注目すると、学べることが増えます。※使用機材は時期によって異なります。

⑤ TAKUROと役割を分けるツインギター

GLAYはHISASHIがリードを担当することが多く、TAKUROはリズムに回ることが多い一方、TAKUROがソロを弾く曲も多いとされます(出典:ニコニコ大百科「TAKURO」)。2021年のインタビューでは、1990年代から「アコギ1本で成立する曲」がGLAYの基準だと話しています(出典:Real Sound)。強い歌と骨格があるからこそ、HISASHIの尖った音が装飾として機能するわけです。

聴くべき作品

  • GLAY『REVIEW -BEST OF GLAY-』(1997)|1990年代の代表曲を一望できるベスト盤。歌の裏でギターが何をしているかを聴く入口に最適です。
  • GLAY『HEAVY GAUGE』(1999)|バンドの全盛期を刻んだ1枚。2本のギターの重なり方に注目して聴いてみてください。
  • GLAY『SUMMERDELICS』(2017)|HISASHI作曲の「デストピア」を収録。メンバーそれぞれの作風の幅が出た作品です。
  • GLAY『FREEDOM ONLY』(2021)|過去の楽曲にも新しいアプローチで向き合った作品。コードやリズムに対する音の置き方を確認できます。
  • GLAY『Back To The Pops』(2024)|「会心ノ一撃」を収録。デモ段階のサンプリング素材を本編に残すなど、作り手としての遊び心が聴けます。

※作品の発売形態や配信状況は変わることがあります。最新情報はGLAY 公式サイトでご確認ください。

HISASHIに学ぶ練習ポイント3つ

① 歌の隙間に「1発だけ」カッティングを入れる

好きな歌ものの伴奏で、基本はパワーコードや開放コードでシンプルに弾きます。そのうえで、歌が途切れる箇所にだけ、短く切れたカッティングを1発入れましょう。曲全体で数回に留めると、その1発が強い印象を残します。

② 歪みを2段に分けて質感を比べる

歪みエフェクターが2台あれば、1台目を軽いクランチ、2台目を中程度にして、順番や量を変えながら聴き比べます。1台しかなければ、アンプ側を軽く歪ませてペダルを足す形でも構いません。単音、パワーコード、開放コードで弾き、歌を邪魔しない歪みの量を耳で探すのが練習の本体です。

③ 打ち込みに合わせて弾き、1曲の中で音色を変える

無料のDAWやリズムアプリで8小節のドラムを打ち込み、それに合わせて弾いて録音します。メトロノーム練習の延長として効果的です。慣れたら、Aメロはリアのクリーン寄り、サビはフロントでなど、セクションごとに音色を変えて録ってみてください。ピックアップセレクターの切り替えだけでも、曲の景色は変わります。

まとめ

HISASHIから学べる最大のことは、王道の歌を守りながら、ギターで「異物感」を足す方法です。温かい曲に尖りを残す発想、歪みの重ね方、打ち込みやシーケンスの活用、録音での音色の作り分け。どれも速弾きの技術というより、曲全体を見渡す編曲の視点から生まれています。

コードが弾けるようになったら、次は「この曲のどこに自分の音を置けば効くか」を考えてみてください。置く場所を変えるだけで、存在感は大きく変わります。

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