派手な速弾きはほとんどしないのに、1本のストラトとアンプだけで曲の空気をがらりと変えてしまう——Red Hot Chili Peppers(レッチリ)のギターを聴いて、そんな不思議さを感じた方は多いはずです。そのギターを弾いているのがジョン・フルシアンテです。

ギタリスト名鑑の第11回はジョン・フルシアンテ。現役プロ講師の視点で「なぜ少ない音数でこれほど耳に残るのか」「その考え方を普段の練習にどう落とし込むか」を分解していきます。キーワードはカッティング・小さなコードフォーム・歌うソロ。リズムギターを上達させたい方にも、ソロのフレーズが単調になりがちな方にも、いちばん参考になるギタリストのひとりです。

プロフィール|18歳でレッチリに加入した「ファンだった少年」

ジョン・フルシアンテは1970年3月5日、アメリカ・ニューヨーク生まれ。少年時代をカリフォルニアで過ごし、ジミ・ヘンドリックスやパンク、ニューウェイヴなど幅広い音楽からギターを吸収しました。もともとレッチリの熱心なファンで、初代ギタリストのヒレル・スロヴァクのプレイを研究していたといわれます(出典:Wikipedia「John Frusciante」)。

ヒレルの急逝を受けて1988年、18歳でレッチリに加入。『Mother’s Milk』(1989)、出世作『Blood Sugar Sex Magik』(1991)に参加したのち、1992年にいったんバンドを離れます。1998年に復帰してからは『Californication』(1999)、『By the Way』(2002)、『Stadium Arcadium』(2006)とバンドの黄金期を支え、2009年に再び脱退。そして2019年12月に2度目の復帰が発表され、2022年には『Unlimited Love』『Return of the Dream Canteen』の2作をリリースしました(出典:Rolling Stone)。

バンドと並行して多数のソロ作品も発表しており、弾き語りに近いアコースティック作品から電子音楽まで、活動の幅が非常に広いのも特徴です。

奏法・音作りの特徴

① 16分で刻み続けるファンク・カッティング

フルシアンテのギターの土台は、右手を16分音符で止めずに振り続けるカッティングです。実際に弦を鳴らすのはその一部だけで、残りは左手で弦を軽く浮かせたブラッシング(空ピッキングに近い「チャッ」という音)。この「鳴らす音」と「ミュートした音」の配分で、フリーのベースとチャド・スミスのドラムに絡むグルーヴを作っています。

ポイントは、音量やコードの響きより「リズムの粒」を優先していることです。左手のミュートのかけ方はミュートの種類と使い分け、右手の動かし方は空ピッキングとはで詳しく解説しています。

② 3〜4本の弦だけで鳴らす「小さなコードフォーム」

6本の弦を全部鳴らすローコードやバレーコードは、実はほとんど使いません。フルシアンテが多用するのは、1〜4弦あたりの3〜4音だけで作るトライアド(3和音)や、ルートを省いたコンパクトなフォームです。ベースがルートをしっかり鳴らしているバンドでは、ギターが低音まで埋めるとかえって濁ってしまう。だから高めの音域に小さく置くわけです。

さらに、そのフォームにハンマリングやプリングで1音だけ飾りを加えるのも定番。ジミ・ヘンドリックス譲りの、コードとメロディの境目があいまいなバッキングです。考え方はボイシングの選び方とコードの転回形で扱っています。

③ 開放弦を混ぜたアルペジオと「間」

『Californication』期以降は、開放弦を混ぜた繊細なアルペジオや、イントロで印象的に鳴る短い単音フレーズが増えます。共通しているのは音を詰め込まず、休符を意識的に残すこと。音のない瞬間があるから、次に鳴る1音が際立ちます。基本はアルペジオの弾き方の基本を参考にしてください。

④ 速さより「歌えるか」を基準にしたソロ

フルシアンテのソロは、ほとんどがペンタトニックスケールを中心にしたシンプルな音選びです。それでも耳に残るのは、口ずさめるメロディになっているかを基準に音を選んでいるから。チョーキングで音程をじわっと上げる、ビブラートを深くかける、ファズで音を伸ばして1音を長く聴かせる——音数の代わりに「1音の表情」で勝負するスタイルです。表情づけはチョーキングの種類とコツが参考になります。

⑤ ヴィンテージ・ストラト+マーシャルのシンプルな音作り

メインギターとして知られるのは、1998年の復帰後に手に入れたとされる1960年代初頭のフェンダー・ストラトキャスター。ほかにテレキャスターやグレッチ・ホワイトファルコンなども曲によって使い分けています。アンプはマーシャルを軸に、歪みはアンプのクランチ+ペダルで足すという考え方。ソロではファズやワウで大胆に音色を変えます(※使用機材は時期によって異なります)。

カッティングの軽やかさは、ストラトのハーフトーン(ピックアップセレクターの中間ポジション)と、強く歪ませすぎないことから生まれています。ギターの特徴はストラトキャスターとは、ポジションの使い分けはピックアップセレクターの使い方で解説しています。

聴くべき作品

  • Red Hot Chili Peppers『Mother’s Milk』(1989)|加入直後の作品。勢いのあるファンク・カッティングとハードなリフの原点です。
  • Red Hot Chili Peppers『Blood Sugar Sex Magik』(1991)|ファンク・カッティングの教科書。ギター1本でどこまでグルーヴを作れるかが分かります。
  • Red Hot Chili Peppers『Californication』(1999)|復帰作にしてバンド最大のヒット。小さなコードフォームと「間」を活かしたフレーズの宝庫です。
  • Red Hot Chili Peppers『By the Way』(2002)|コーラスワークやアルペジオなど、メロディ重視に振り切った1枚。
  • Red Hot Chili Peppers『Stadium Arcadium』(2006)|2枚組の大作。ファズやワウを駆使した歌うソロをたっぷり聴けます。

※作品の発売形態や配信状況は変わることがあります。最新情報はRed Hot Chili Peppers 公式サイトでご確認ください。

ジョン・フルシアンテに学ぶ練習ポイント3つ

① 右手を止めない「16分の空ピッキング」

メトロノームをBPM70前後に設定し、1拍の中でダウン・アップ・ダウン・アップの4回、右手を一定に振り続けます。最初は全部ミュートの「チャッ」でOK。慣れたら、2拍目と4拍目の裏だけ左手の力を抜いてコードを鳴らすようにします。鳴らす場所を変えても右手の振りは絶対に止めない——これがフルシアンテ流カッティングの基礎体力です。テンポの合わせ方はBPMとメトロノームの使い方をどうぞ。

② いつものコードを「上の3本だけ」で弾き直す

普段ローコードで弾いているコード進行を、1〜3弦の3音だけのフォームに置き換えてみましょう。たとえばCなら、1〜3弦で押さえられるCの構成音(ド・ミ・ソ)の並びを、ネックの低い位置・中ほど・高い位置の3か所で探します。同じコードでも音域が変わると雰囲気がまったく違うことに気づくはずです。構成音の探し方はコードの構成音とはで解説しています。

③ 「歌ってから弾く」ソロ作り

ペンタトニックの形を指で追うのではなく、先に4小節ぶんのメロディを鼻歌で作り、それをギターで探して弾きます。最初は5〜6音で十分。歌えたフレーズだけを採用するというルールにすると、自然と音数が減り、1音ごとのチョーキングやビブラートに意識が向くようになります。スマホで録音して聴き返すと、さらに効果的です。

まとめ

ジョン・フルシアンテから学べる最大のことは、「たくさん弾くこと」より「何を弾かないか」が音楽を決めるということです。止まらない右手が生むカッティングのグルーヴ、ベースと喧嘩しない小さなコードフォーム、休符を活かしたアルペジオ、歌えるかどうかで選ぶソロの音——どれも指の速さではなく、リズム感と耳の使い方で差がつく部分です。

コードチェンジに慣れてきたら、次は「同じコードをどれだけ少ない音で、どれだけ気持ちよく刻めるか」に挑戦してみてください。バンドで弾いたとき、あなたのギターの聴こえ方が大きく変わるはずです。

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