Queenの曲を聴くと、ギターが1本鳴っているとは思えない瞬間があります。バイオリンやホルンのような音が何層にも重なり、まるでギターだけでオーケストラを作っているかのようです。その音の主がブライアン・メイです。

ギタリスト名鑑の第13回はブライアン・メイ。現役プロ講師の視点で「なぜあの声のようなギターが生まれたのか」「その発想を普段の練習にどう活かすか」を分解します。キーワードは自作ギター・硬貨ピック・多重録音です。

プロフィール|ロックスターで天体物理学者、そして「サー」

ブライアン・メイは1947年、ロンドン近郊の生まれ。Queenのギタリストとして「We Will Rock You」「Tie Your Mother Down」など多くの名曲を作曲しました。学生時代は天文学を専攻し、Queenの成功で研究を一度中断しましたが、2007年にインペリアル・カレッジ・ロンドンで天体物理学の博士号を取得しています。2023年には音楽と慈善活動への貢献でナイトの称号を受けました(出典:Space.com)。

ギタリストとして語るうえで欠かせないのが、10代のころに父ハロルドと2人で作ったギター「レッド・スペシャル」です。1963年ごろから作り始め、ネックには古い暖炉まわりの木材が使われたと伝えられています(出典:Wikipedia「Red Special」)。それから60年以上、彼のメインギターはこの1本です。

奏法・音作りの特徴

① 自作ギター「レッド・スペシャル」が音の土台

レッド・スペシャルは、ブライアンが求める音を出すために設計されたギターです。ピックアップ3基それぞれにオン/オフと位相切り替えのスイッチがあり、組み合わせ次第で太い音から細く鼻にかかった音まで作れます(出典:Wikipedia「Red Special」)。一般的なギターのセレクターより選択肢がずっと多いのが特徴です。

ふつうのギターでも、ピックアップの選び方で「声色」を変えるという考え方は同じです。基本はピックアップセレクターの使い方で解説しています。

② 硬貨をピックにする

ブライアンはプラスチックのピックではなく、古い6ペンス硬貨をピック代わりに使うことで知られています(出典:Premier Guitar「Rig Rundown」)。硬い金属の縁が弦に当たることで、アタックに独特のザラッとした成分が加わります。硬貨を弦に対して少し斜めに当てると、その成分がさらに強く出ます。

大事なのは「硬貨を使うこと」より、ピックの素材・角度・当て方で音が変わるという事実です。ピック選びの基本はピックの選び方をご覧ください。

③ トレブルブースター+Vox AC30の歌う歪み

音作りの核は、トレブルブースターでVox AC30を押し込む組み合わせです。初期はDallas Rangemasterを使い、のちに専用に作られたブースターへ移っていきました(出典:Premier Guitar「Rig Rundown」)。高音域を持ち上げてアンプを歪ませるので、太いのに抜ける、人の声のような中高域が生まれます。

歪みペダルで作る音とは質感が違います。ブースターの考え方はブースターの使い方、アンプ側のつまみはアンプのEQ設定で確認できます。

④ 多重録音で作る「ギター・オーケストラ」

ブライアン最大の個性は、何本ものギターを重ねてハーモニーを作る録音です。主旋律に3度や6度上のラインを足し、さらに別のパートを重ねて、ギターだけで和音の響きを作ります。シンセサイザーを使わずに、ギターで弦楽器や管楽器のような質感を出しているのがポイントです。

ここで効いてくるのがコードの構成音の理解です。ハモりのラインは、コードトーンのどれを選ぶかで決まります。コードの構成音(コードトーン)の記事で、その土台を確認できます。

⑤ ディレイで自分と合奏する

ライブでは、ディレイの反復音をもう1人の自分として使います。弾いたフレーズが少し遅れて返ってくるタイミングに合わせて次の音を重ねると、1人で輪唱のような和音を作れます。Queen「Brighton Rock」のソロがよく知られた例です。ディレイの基本はディレイの使い方で解説しています。

※使用機材は時期によって異なります。

聴くべき作品

  • Queen『Sheer Heart Attack』(1974)|「Brighton Rock」を収録。ディレイを使ったソロとハードなリフの両方が聴けます。
  • Queen『A Night at the Opera』(1975)|多重録音ギターの到達点ともいえる1枚。ギターの重なりがどこから聞こえるか、ヘッドホンで追ってみてください。
  • Queen『News of the World』(1977)|「We Will Rock You」を収録。音数を絞ったシンプルなギターでも存在感を出せることがわかります。
  • Queen『Innuendo』(1991)|後期の名作。泣きのチョーキングとメロディアスなソロの集大成です。

※作品の発売形態や配信状況は変わることがあります。最新情報はQueen 公式サイトでご確認ください。

ブライアン・メイに学ぶ練習ポイント3つ

① 3度上のハモりを自分で作る

簡単なメロディを1本弾いて録音し、その3度上(キーの中の2つ上の音)で同じリズムのラインを作って重ねます。スマホの録音アプリでも構いません。2本重ねただけで、響きが一気に厚くなるのを体感できます。慣れたら6度下のラインも足してみましょう。録音の手順は録音を使った練習法が参考になります。

② ピックの角度を変えて音色を比べる

同じフレーズを、ピックを弦に平行に当てた場合と、少し斜めに当てた場合で弾き比べます。斜めにするとアタックにザラつきが出ます。どちらが良い悪いではなく、場面に合わせて選べるようになるのが目的です。

③ 1音を「歌わせる」チョーキングとビブラート

ブライアンのソロは音数が多くありません。1音をチョーキングで正確な音程まで上げ、ゆっくりビブラートをかける練習をしましょう。上げた音が目標の音程に届いているか、チューナーや元の音と比べて確認するのがコツです。基本はチョーキングのやり方で解説しています。

まとめ

ブライアン・メイから学べる最大のことは、「欲しい音」を先に決めて、そこから道具と弾き方を組み立てる姿勢です。自作ギター、硬貨のピック、ブースター+アンプの音、多重録音のハーモニー。どれも、ギターで歌のような音を出したいという一つの目標から生まれています。

いきなりギター・オーケストラを作る必要はありません。まずはメロディに1本ハモりを重ねるところから始めてみてください。ギターの聞こえ方が変わるはずです。

🎸 東京・新宿でギターを習うなら

紅白出場クラスの現役アーティストやプロの作編曲家、ギター講師までが習いに来る完全マンツーマンのギター教室です。初心者の方も、レベル・ペース・目標に合わせたオリジナルカリキュラムでレッスンしています。

関連記事

「ソロが単調になる」「ハモりをどう作ればいいかわからない」——こうした悩みは、コードの構成音と音の重ね方を少し理解するだけで解けることが多いです。ひとりで悩む前に、気軽にご相談ください。

💬 まずは気軽にLINEで相談

「あの曲のギターが弾きたい」「自分でも大丈夫?」など1問だけでもOK。
講師Kazが直接お答えします(24時間以内)

LINEで質問する(30秒)

▸ 無料カウンセリングのお問い合わせはこちら