ギターアンプのEQ(イコライザー)とは、音を高さの帯域ごとに分けて、それぞれの量を増やしたり減らしたりするつまみです。多くのアンプには「BASS(低音)」「MIDDLE(中音)」「TREBLE(高音)」の3つが並んでいて、これを3バンドEQと呼びます。

レッスンで「音がこもる」「弾いているのに埋もれて聞こえない」という相談を受けたとき、原因が指ではなくEQの設定だったことは何度もあります。とくにMIDDLEをどう扱うかで音の印象は大きく変わります

この記事では、3つのつまみがそれぞれ何を動かしているのか、実際にどの順番で回せばいいのか、そして自宅練習で陥りやすい失敗までを、レッスンでお伝えしている順番で解説します。

EQとは|音を3つの帯域に分けて調整する仕組み

ギターから出ている音は、1つの高さの音ではありません。押さえた音そのもの(基音)に加えて、その上に重なるたくさんの倍音や、弦をはじいた瞬間の雑音的な成分が同時に鳴っています。

EQは、この混ざり合った音を高さでいくつかの区画に分けて、区画ごとに音量を変える装置です。3バンドEQなら、低い側・真ん中・高い側の3つに分けて扱います。音を作り替えているのではなく、もともと鳴っている成分の配分を変えていると考えると理解しやすくなります。

3つのつまみが担当する音

  • BASS(低音):音の土台になる太さや重さ。上げると厚みが出て、下げるとすっきりします。上げすぎると輪郭がぼやけて、もこもこした印象になります
  • MIDDLE(中音):ギターの音の「芯」がある帯域。上げると前に出て、輪郭がはっきりします。下げると引っ込んで、周りの楽器に隠れます
  • TREBLE(高音):きらびやかさ、弦を弾いた瞬間の粒立ち。上げると明るく硬くなり、下げると丸くこもります。上げすぎると耳に刺さります

この3つは完全に独立してはいません。BASSとMIDDLEが担当する範囲は少し重なっていて、片方を動かすともう片方の聞こえ方も変わります。1つずつ完璧に決めようとせず、3つのバランスで見るのが正しい向き合い方です。

MIDDLEがいちばん重要な理由

3つのうち、音の印象を最も大きく左右するのがMIDDLEです。ギターという楽器の音の中心はこの帯域にあり、ここを削ると「上と下だけが残った音」になります。

MIDDLEを下げた音は、ギター1本で聴くと迫力があって格好よく聞こえます。ところが、バンドで合わせた瞬間に消えます。ベースとドラムが低い側と高い側を埋めてしまい、ギターに残された居場所が中音だからです。1人で聴いて気持ちいい設定と、合わせて機能する設定は別物だと覚えておいてください。

EQの使い方|回す順番と手順

やみくもに回すと、どこをどう変えたか分からなくなります。次の順番で進めてください。

手順1:全部を真ん中(12時)に戻す

まず3つとも真ん中の位置にします。これが基準点です。多くのアンプは、このあたりで素直な音が出るように設計されています。ここから離れた分が「自分が加えた味付け」になります。

迷子になったら、必ずこの位置に戻してやり直します。基準を持たずに動かし続けるのが、いちばん時間を無駄にするパターンです。

手順2:歪みの量を先に決める

GAINやDRIVEといった歪みのつまみを先に決めます。歪みの量が変わるとEQの効き方も変わるため、順番を逆にすると二度手間になります。

自宅練習では、思っているより歪ませないほうが上達に役立ちます。歪みは弾き損じや音の濁りを覆い隠すので、ハンマリング・プリングのような細かい動きが、できていなくてもできているように聞こえてしまいます。

手順3:1つずつ、大きく回して効果を覚える

次に、つまみを1つだけ選んで、いったん大きく回します。BASSを最小まで下げてみる、最大まで上げてみる、という具合です。微調整から始めると違いが分からず、何を触っているのか覚えられません。

極端な両端を聞いてから真ん中に戻すと、そのつまみが何を動かしているのかが体感として残ります。3つとも同じように試してください。この作業は最初の1回だけで十分で、以降は感覚で狙った方向に回せるようになります。

手順4:不足を足すより、余分を削る

実際の調整では、足すより削るほうがうまくいきます。「高音が足りない」と感じたときにTREBLEを上げるより、BASSを少し下げるほうが自然に明るくなることが多くあります。

上げる調整は全体の音量も一緒に持ち上げるため、耳が「大きい=良い音」と錯覚しやすくなります。削る方向で試して、それでも足りなければ足す。この順番だと判断を誤りにくくなります。

手順5:弾きながら回す

音を止めて回して、また弾いて確認する、という進め方だと比較になりません。開放弦をかき鳴らしながら、あるいは短いフレーズを繰り返しながら、その場でつまみを回してください。変化が地続きで聞こえるので、判断が速くなります。

自宅練習でのEQの活かし方

小音量では低音が聞こえにくい

人の耳は、音量が小さいときほど低音と高音を感じ取りにくくなります。そのため、自宅の小さい音量で「低音が足りない」と感じてBASSを上げると、大きい音量で鳴らしたときに過剰になります。

自宅用と、スタジオやライブ用で設定が変わるのは当たり前のことです。1つの正解を探すのではなく、場所ごとに作り直すという前提で構えてください。

練習用にはあえて素直な設定を

練習の目的が「弾けるようになること」なら、EQは3つとも真ん中付近、歪みも控えめにしておくのがおすすめです。粗が隠れないぶん、ミュートしきれていない弦や、押さえが浅くて音が詰まっている箇所が耳で分かります。

気持ちよく弾くための設定と、直すための設定は分けて考えてください。メトロノームを使う練習のときは、TREBLEを少し上げてクリック音と弦の音を聞き分けやすくする、という使い方もできます。

つまみの位置を記録しておく

いい音が出たら、そのときのつまみの向きをスマートフォンで撮っておいてください。次に触ったとき、ゼロから探し直さずに済みます。曲ごと・場所ごとに数枚ためておくと、自分の好みの傾向も見えてきます。

よくある失敗と注意点

MIDDLEを絞りきってしまう

最も多い失敗です。MIDDLEを最小にした音は単体では迫力がありますが、合奏では真っ先に埋もれます。人と合わせる予定があるなら、真ん中より下げすぎないところで止めてください。

全部を上げて音量が上がっただけ

3つとも上げれば、当然すべての帯域が増えます。これは音作りではなく、単に音量を上げているだけです。EQはバランスを取る道具で、音量のつまみではありません。迷ったら手順1に戻ります。

ギター側のつまみを確認していない

アンプをいくら触っても音がこもる場合、ギター本体のトーンつまみが絞られていることがあります。ピックアップの切り替えでも音の明るさは変わります。アンプの前に、まずギター側のつまみを全開にして、ピックアップの位置も確認してください。

アンプによってEQの効き方が違う

同じ「MIDDLE」でも、機種によって担当する帯域も効きの強さも異なります。雑誌やネットで見た設定をそのまま真似ても、同じ音にはなりません。あくまで出発点として使い、自分の耳で調整し直すのが前提です。

耳が疲れた状態で決める

長時間同じ音を聞いていると、耳が慣れて判断が鈍ります。10分以上かけても決まらないときは、いったん止めて休むか、真ん中に戻して翌日やり直したほうが早く決まります。

よくある質問(FAQ)

初心者はEQをどの位置にしておけばいいですか?

3つとも真ん中の位置から始めてください。多くのアンプはこのあたりで素直な音が出るように作られていて、練習用としてはこれで十分です。そのうえで、こもると感じたらBASSを少し下げる、耳に刺さると感じたらTREBLEを少し下げる、という引き算で調整します。慣れないうちに大きく動かすと、音がおかしいのか自分の弾き方が原因なのかを切り分けられなくなります。まずは基準の位置に慣れることを優先してください。

アンプにPRESENCEというつまみもあります。EQとは違うものですか?

役割としては近いものですが、扱う場所が違います。BASS・MIDDLE・TREBLEが音を作る途中の段階で働くのに対して、PRESENCEは出力に近い最終段で、TREBLEよりさらに高い側の張り出しを調整します。上げると音が前に出て抜けがよくなり、下げると落ち着きます。3バンドを決めたあと、最後に少しだけ触る仕上げのつまみと考えてください。搭載されていない機種も多く、なくても困りません。

エフェクターのEQとアンプのEQは、どちらを使うべきですか?

まずアンプのEQで基本の音を作ってください。土台がずれたままエフェクターで補正すると、設定が複雑になって原因を追いにくくなります。アンプ側で決めきれない細かい調整や、特定の曲だけ音を変えたい場面で、エフェクターのEQを足す。この順番が管理しやすくなります。ペダルを増やすほど、どこで何が起きているか分からなくなりやすいので、まずはアンプ直結で狙った音に近づける練習をおすすめします。

まとめ

  • EQとは、音を帯域ごとに分けて配分を変えるつまみ。3バンドはBASS・MIDDLE・TREBLE
  • MIDDLEがギターの芯。絞りきると合奏で埋もれる
  • 手順は「全部真ん中に戻す→歪みを決める→1つずつ大きく回す→削る方向で調整→弾きながら回す」
  • 足すより削るほうが失敗しにくい
  • 小音量では低音・高音が聞こえにくいため、自宅と本番で設定は変わって当然
  • 練習用は素直な設定にしておくと、直すべき箇所が耳で分かる

音作りは、うまくなってから覚えるものではありません。自分が今出している音がちゃんと聞こえていないと、直すべき場所にも気づけないからです。まずは3つを真ん中に戻して、そこから1つずつ動かしてみるところから始めてみてください。

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