バンドで合わせてみると、「ギターソロになった途端に音が埋もれる」「自宅ではちょうどよかったのに、スタジオでは存在感がない」という悩みがよく出てきます。そんなときに候補に上がるのが、ブースターと呼ばれるエフェクターです。
結論から言うと、①ブースターは音色を大きく変えずに「音量」や「歪みの量」を押し上げる機材 ②使い方は「ソロの音量アップ」「歪みを押す」「アンプを押す」の3つが基本 ③最初はソロで少しだけ音量を上げる用途から始める——この3点を押さえれば、失敗なく使い始められます。
この記事では、ブースターの役割と仕組み、オーバードライブとの違い、実際のつなぎ方とつまみの決め方、初心者がやりがちな失敗までを、東京・新宿エリアでレッスンをしている現役プロ講師の視点で順番に解説します。
ブースターとは(役割と仕組み)
ブースターとは、ギターの信号を増幅(ブースト)して、後ろにつながる機材へ大きな信号を送るエフェクターです。つまみが「LEVEL(音量)」1つだけのシンプルな機種も多く、エフェクターの中では構造も操作もわかりやすい部類に入ります。
ポイントは、ブースターそのものが派手な効果を持つわけではないという点です。どう聞こえるかは「どこにつなぐか」で決まります。アンプや歪み系ペダルの前に置けば歪みが増え、歪みの後ろに置けば歪み具合はそのままに音量だけが上がります。
オーバードライブとの違い
オーバードライブも信号を持ち上げて歪ませる機材ですが、それ自体がはっきりとした歪みと音色のキャラクターを持っています。一方、ブースターは自分では音色をなるべく変えず、前後の機材の働きを強める「縁の下の力持ち」です。実際には、オーバードライブのゲインを下げてレベルを上げ、ブースター代わりに使う方法もよく知られています。
ブースターの主な種類
- クリーンブースター:音色の変化を抑え、音量だけを持ち上げるタイプ。最初の1台として扱いやすい種類です。
- ミッドブースター:中音域を強調して持ち上げるタイプ。バンドの中で音が前に出やすくなります。
- トレブルブースター:高音域を強調するタイプ。明るく抜ける音を狙うときに使われます。
機種によって、つまみの数や音の変化の度合いはさまざまです。どの帯域をどれくらい持ち上げるかは製品ごとに異なるため、購入前には試奏や説明書で確認してください。
ブースターの使い方・実践
使い方1:ソロのときだけ音量を上げる
初心者の方にいちばんおすすめなのがこの使い方です。歪み系ペダルの後ろ(アンプ側)にクリーンブースターをつなぎ、バッキングではオフ、ソロのときだけオンにします。歪みの質感はそのままで音量だけが上がるので、「ソロで埋もれる」という悩みにいちばん直接効きます。
使い方2:歪み系ペダルを「押す」
ブースターを歪み系ペダルの前(ギター側)につなぐと、歪みペダルに入る信号が大きくなり、歪みが深くなってサステイン(音の伸び)が増えます。「普段の歪みはこのままで、ソロだけもう少し粘りがほしい」というときに便利です。ただし音量も同時に上がるので、歪みペダル側の音量とのバランスを見ながら調整します。
使い方3:アンプを押す
歪み系ペダルを使わず、アンプの歪みチャンネルで弾いている場合は、ギターとアンプの間にブースターを入れて使います。アンプの歪みがひと段階深くなり、ピッキングへの反応もよくなります。スタジオのアンプで弾くことが多い方には覚えておきたい使い方です。
つまみ設定の手順
- ブースターをオフにした状態で、バンドで合わせる音量のバッキングの音を先に決める
- ブースターのLEVELを最小にしてからオンにする
- オン・オフを切り替えながら、少しずつLEVELを上げていく
- ソロの音が「伴奏の中からはっきり聞こえる」ところで止める
大事なのは、自宅の小さな音量ではなく、実際に演奏する音量で決めることです。小音量で「ちょうどいい差」に設定しても、大音量のスタジオでは差が大きすぎたり、逆に足りなかったりします。
選び方と、練習での活かし方
最初の1台を選ぶなら、次の3点を基準にすると迷いにくくなります。
- 用途を1つに決める:「ソロの音量アップ」が目的なら、音色の変化が少ないクリーンブースターが扱いやすいです。
- つまみはシンプルなものから:つまみが少ないほど、本番で設定が迷子になりません。
- ボードの空きと電源を確認する:サイズや電源の仕様は機種ごとに違うため、手持ちの環境で使えるかを事前に確認します。
価格は数千円程度のシンプルなものから、1万円台以上のこだわったものまで幅があります。高いものほど良いというより、目的に合っているかで選んでください。
練習面では、ブースターを「演奏の粗を映す鏡」として使うのがおすすめです。音量や歪みが上がると、ミュートしきれていない弦の雑音や、ピッキングの粒のばらつきがはっきり聞こえるようになります。ブーストした状態でソロのフレーズを弾き、余計な音が鳴っていないかを確認してから、オフに戻して同じように弾けるかを試してみてください。
また、ブースターに頼る前に、ピッキングの強弱だけで音量差を作れるかも確認しておきたいポイントです。当教室のレッスンでも、機材で解決する部分と、右手のコントロールで解決する部分を分けて整理するようにしています。両方がそろうと、どんな環境でも「ソロで前に出る音」を安定して作れるようになります。
よくある失敗と注意点
失敗1:LEVELを上げすぎる
オンにした瞬間に大きく音量が跳ね上がると、耳への負担が大きく、ハウリングの原因にもなります。ライブではPAの方の調整も難しくなるため、「少し物足りない」くらいから始めてください。
失敗2:自宅の音量で設定したまま持ち出す
小音量で決めた設定は、大音量の現場ではバランスが変わります。スタジオに入ったら、最初にバンドの音量でオン・オフの差を確認し直す習慣をつけましょう。
失敗3:歪みに歪みを重ねすぎて音がつぶれる
歪みの前でブーストすると、歪みが深くなりすぎて音の輪郭がぼやけ、コードの響きがつぶれることがあります。音がこもったと感じたら、歪みペダル側のゲインを少し下げて調整します。
失敗4:ノイズが増えたのを放置する
信号を持ち上げると、ノイズも一緒に大きくなります。弾いていないときの「サー」「ジー」という音が気になる場合は、ボリュームの上げ下げやミュートの徹底、ケーブルや電源の見直しを先に行ってください。
失敗5:踏むタイミングを練習していない
ソロの直前で踏み遅れると、最初の数音が小さいまま過ぎてしまいます。ソロに入る前の2小節だけを取り出し、踏むタイミングまで含めて繰り返し練習しておくと、本番での事故が減ります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ブースターは初心者にも必要ですか?
最初から必須ではありません。まずはギター本体のボリュームやピッキングの強弱で音量をコントロールできることが大切です。そのうえで、バンドで合わせたときに「ソロで音が埋もれる」と感じ始めたら、導入を考えるタイミングです。
Q2. オーバードライブでブースターの代わりはできますか?
できます。オーバードライブのゲインを低めにしてレベルを上げると、ブースターに近い使い方ができます。ただしオーバードライブには独自の音色のキャラクターがあるため、音色の変化を抑えて音量だけを上げたい場合はクリーンブースターのほうが向いています。
Q3. ブースターはどこにつなぐのが正解ですか?
目的によって変わります。ソロで音量だけを上げたいなら歪み系ペダルの後ろ、歪みを深くしたいなら歪み系ペダルの前、アンプの歪みを押したいならギターとアンプの間が基本です。まずは歪みの後ろに置いて音量アップ用に使うところから始めると、効果がわかりやすく失敗も少なくなります。
まとめ
ブースターは、音色を大きく変えずに音量や歪みの量を押し上げるための機材です。どこにつなぐかで働きが変わり、歪みの後ろなら音量アップ、歪みの前なら歪みを深く、アンプの前ならアンプを押す、という使い分けになります。
最初は「ソロのときだけ少し音量を上げる」使い方から始め、必ず実際に演奏する音量で設定してください。ブーストした音で自分の演奏の粗を確認する習慣をつければ、機材だけでなく演奏そのものの精度も上がっていきます。
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