「楽器店で試奏してみたいけれど、うまく弾けないから恥ずかしい」「何を確かめればいいのか分からない」——ギター購入前に、こんな不安を感じる方は少なくありません。結論から言えば、試奏は上手に弾けるかどうかではなく、「その1本に不具合がないか」「自分の体に合うか」を確かめる時間です。開放弦と簡単なコードが弾ければ、確認できることはたくさんあります。
ここでは現役プロ講師の立場から、試奏の前に準備しておくこと、当日の流れ、具体的なチェックポイント、複数のギターを比べるコツ、お店でのマナーまでを整理します。
試奏の結論|確かめるのは「状態」「弾きやすさ」「音」の3つ
試奏で見るべきポイントは、大きく次の3つに分けられます。順番もこのとおりに進めると、短い時間でも効率よく確認できます。
| 確認すること | 主なチェック項目 | 初心者でも確認できる? |
|---|---|---|
| ① 楽器の状態 | 外観の傷、ネックの状態、ペグやつまみの動き、ジャックの接触 | できる(見る・触るだけでOK) |
| ② 弾きやすさ | 弦高、ネックの握り心地、重さ、座ったとき・立ったときの構えやすさ | できる(簡単なコードで十分) |
| ③ 音 | 音程の正確さ、音のビビり、好みの音色かどうか | ある程度できる(比べると分かりやすい) |
つまり、試奏の大部分は「演奏の腕前」がなくてもできる確認作業です。音色の好みは、弾けるようになるにつれて変わっていくものなので、最初の1本では①と②を特に重視しましょう。
試奏の前に準備しておくこと
1. 予算と候補のタイプを決めておく
お店に行く前に、おおよその予算と「エレキかアコギか」「どんな音楽を弾きたいか」を決めておくと、店員さんにも相談しやすくなります。予算の考え方は初心者向けエレキギターの選び方・初心者向けアコースティックギターの選び方で解説しています。
2. 弾くフレーズを1〜2つ決めておく
当日に何を弾くか迷うと、緊張してしまいがちです。開放弦を1本ずつ鳴らす、知っているコードを2〜3個ストロークする程度で十分なので、毎回同じ内容を弾けるように決めておきましょう。同じフレーズで弾き比べると、ギターごとの違いが分かりやすくなります。
3. 服装と持ち物
ギターの裏側に当たる金属製のベルトバックルや、ボタンの大きな服は傷の原因になるため避けるのが安心です。普段使っているピックがあれば持参すると、弾き心地を比べやすくなります。
当日の流れ|声をかけるところから
試奏したいギターが決まったら、自分で壁から外さず、必ず店員さんに声をかけましょう。「初心者なので簡単にしか弾けませんが、試奏してもいいですか」と伝えておけば、チューニングを合わせてくれたり、エレキならアンプの準備をしてくれたりします。予算や用途を伝えると、近い条件の候補を出してもらえることもあります。
試奏したからといって、その場で買わなければいけないわけではありません。気になった点があれば遠慮なく質問し、「少し考えます」と伝えて帰っても問題ありません。
失敗しないチェックポイント6つ
1. 外観とネックの状態
ボディの傷や塗装の割れに加えて、ヘッド側からボディに向かってネックを眺め、極端に反っていたり、ねじれていたりしないかを見ます。判断が難しければ「ネックの状態はどうですか」と店員さんに聞いてしまうのが確実です。中古の場合は、中古ギターの選び方と注意点のチェック項目も合わせて確認してください。
2. 弦高と押さえやすさ
弦高(指板から弦までの高さ)が高すぎると、弦を押さえるのに力が必要になり、初心者のうちは特に指が痛くなりやすくなります。Fのようなセーハ(人差し指で複数の弦を押さえる形)が弾けなくても、ローコードを押さえたときに「妙に硬い」と感じないかを比べてみましょう。弦高は調整できる場合も多いので、気になったら購入時に調整してもらえるか相談するのもひとつの方法です。
3. 音程の正確さ
チューニングを合わせた状態で、ローポジションのコードとハイポジション(ボディ寄りのフレット)の音を弾き比べます。ローポジションでは合っているのに、高いフレットで音が濁る場合は、調整が必要な可能性があります。チューニングの基本はギターチューニングの方法をご覧ください。
4. 音のビビりと詰まり
各弦を1フレットずつ順番に押さえて鳴らし、「ジジッ」というビビり音や、音がすぐに途切れる箇所がないか確かめます。全フレットを確認するのが大変なら、よく使うローポジションの範囲だけでも見ておくと安心です。
5. パーツの動き(ペグ・つまみ・スイッチ)
ペグ(糸巻き)が引っかからずに回るか、エレキならボリュームやトーンのつまみを回したときに「ガリッ」という雑音が出ないか、ピックアップの切り替えスイッチが正常に動くかを確認します。シールドを軽く動かしても音が途切れないかも見ておきましょう。
6. 重さと構えやすさ
座って弾くだけでなく、ストラップを付けて立った姿勢でも構えさせてもらいましょう。重さやバランスは、長く弾くほど練習の続けやすさに影響します。ボディが体にしっくり収まるかどうかは、実際に抱えてみないと分からない部分です。
複数のギターを比べるコツ
比べるときは、同じアンプ・同じ設定・同じフレーズにそろえるのが鉄則です。エレキの場合は、まずエフェクトをかけないクリーンな音で弾くと、ギター本来の違いが分かりやすくなります。アンプの基本はギターアンプの種類と選び方も参考にしてください。アコギは生音で、表板の材質(単板と合板の違い)による響きの差にも注目してみましょう。
一度にたくさん試すと違いが分からなくなるので、候補は2〜3本に絞るのがおすすめです。最後に迷ったら、「見た目が気に入って、手に取りたくなる1本」を選んで大丈夫です。毎日触りたくなるかどうかは、上達にとって大切な要素だからです。
講師からのアドバイス|「うまく弾けない」は試奏をためらう理由にならない
レッスンでは、「まだ弾けないので、試奏するのが恥ずかしい」というご相談をよくいただきます。私は、初心者の方こそ試奏をしてほしいとお伝えしています。経験者は多少弾きにくいギターでも力でカバーできてしまいますが、初心者の方は弦高の高さやネックの太さの影響を大きく受けるからです。弾きにくいギターを選んでしまうと、「自分には才能がない」と誤解して練習が続かなくなる原因にもなります。
また、ネット通販で購入する場合でも、一度お店で同じタイプのギターを抱えておくと、サイズ感や重さのイメージがつかみやすくなります。1本目の考え方は初めてのギターの選び方、買い替えを考えている方は2本目のギターの選び方も参考にしてください。
まとめ
ギターの試奏は、上手に弾くための場ではなく「楽器の状態」「弾きやすさ」「音」を確かめる時間です。事前に予算と弾くフレーズを決め、店員さんに声をかけてから試奏しましょう。ネックの状態、弦高、音程、ビビり、パーツの動き、重さの6点を同じ条件で比べれば、初心者でも失敗しにくい1本を選べます。
「自分に合うギターがどれか分からない」という段階でしたら、お気軽にご相談ください。
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