初めてのエレキギター選びで、いちばん多い失敗は「安すぎる本体を選んでしまうこと」です。結論から言えば、本体は3万〜5万円程度、アンプなどの周辺機器に別途1万5千〜3万円程度を見ておくのが、初心者にとって最もつまずきにくい配分です。理由はシンプルで、この価格帯を下回るとチューニングが安定せず、「弾けないのは自分のせい」と誤解したまま挫折してしまう人が非常に多いからです。

ここでは現役プロ講師として多くの初心者の「最初の1本」を見てきた立場から、予算帯ごとの考え方と店頭でのチェックポイントを整理します。特定の商品をすすめるのではなく、どんなモデルを選んでも判断できる基準をお伝えします。

選び方の結論|「本体8割・見た目2割」ではなく逆でいい

意外に思われるかもしれませんが、最初の1本は「見た目が好きかどうか」を重視して構いません。ただし条件がひとつあり、それは一定以上の品質ラインを満たしていることです。

レッスンをしていて実感するのは、練習が続く人と続かない人の差が、才能でも練習時間でもなく「そのギターを手に取りたくなるか」にあるということです。ですから色や形の好みは遠慮なく優先してください。一方で、品質ラインを下回った個体を選んでしまうと、好みも何も関係なく練習が成立しなくなります。「品質の最低ラインを守った上で、その中から好きな見た目を選ぶ」——これが最初の1本の正解です。

予算帯別の考え方|価格で何が変わるのか

1万円台以下|基本的には避けたい価格帯

この価格帯のギターは、ペグ(糸巻き)の精度やナットの溝の仕上げ、フレットの処理といった「音が出るまでの土台」が甘い個体に当たりやすくなります。具体的には、チューニングしてもすぐ狂う/特定のフレットで音がビビる/弦高が高すぎて押さえられないといった症状です。

問題は、初心者の方にはこれが「楽器の問題」だと判断できないことです。実際にレッスンへ持ち込まれた楽器を調整したら、その場で音が出るようになったというケースは何度もあります。

3万〜5万円程度|最もおすすめの価格帯

初心者の方に最もすすめやすいのがこのゾーンです。国内外の大手メーカーが展開する入門モデルが揃い、製造から検品までの体制が整っているため、個体差が小さいのが最大の利点です。チューニングが安定し、弦高やネックの状態も実用範囲に収まっている個体がほとんどです。

「安いものから始めて、続いたら良いものに買い替える」という考え方は一見合理的ですが、実際には逆になりがちです。続くかどうかを左右するのが楽器の状態そのものだからです。この価格帯なら、数年単位で問題なく使えます。

7万〜10万円程度以上|最初から長く使いたい方へ

この価格帯になると、パーツの質やネックの安定性で明確な差が出てきます。ただし「高いほど弾きやすい」わけではない点は誤解しないでください。上位モデルは弾き手が求める反応の細かさに応える設計であって、初心者の押弦を助けてくれるわけではありません。優先順位としては、本体を10万円にするより本体5万円+しっかりしたアンプ+レッスンのほうが、上達という意味でははるかに効率的です。

忘れられがちな「周辺機器」の予算

エレキギターは本体だけでは音が出ません。最低限そろえるものと、目安の予算感は次のとおりです。

必要なもの予算の目安優先度
アンプ(自宅練習用)1万〜2万円程度必須
シールドケーブル2千〜5千円程度必須
チューナー2千〜4千円程度必須
ピック・替え弦1千〜2千円程度必須
ギタースタンド2千〜4千円程度強く推奨
ストラップ2千〜5千円程度立って弾くなら

合計すると2万〜3万円程度。ここを見落として本体に予算を使い切ってしまう方が本当に多いので、最初から総額で考えてください。なおギタースタンドは「強く推奨」としています。ケースにしまうと出すのが億劫になり、練習頻度が目に見えて落ちるからです。すぐ手に取れる場所に立てておくだけで、練習時間は自然に増えます。

失敗しないチェックポイント5つ

1. ネックが反っていないか

最も重要です。ギターを構え、ヘッド側から指板を見通してみてください。ネックが波打っていたり、大きく反っていたりすると、どこかのフレットで必ず音がビビります。判断に自信がなければ、店員さんに「ネックの状態を見てもらえますか」と率直に聞いて構いません。

2. 弦高が高すぎないか

弦とフレットの距離が離れているほど、押さえるのに力が要ります。初心者の方が「Fコードが押さえられない」と悩む原因の一部は、実は弦高にあります。弾いたことがなくても、複数の個体を触り比べれば「軽い・重い」の差は必ず感じ取れます。軽いと感じたほうを選んでください。

3. フレットの端が手に引っかからないか

ネックの側面を、握った手をゆっくり上下させて確かめます。フレットの端が飛び出していると、チクチクと引っかかります。これは仕上げの丁寧さがそのまま出る部分で、価格帯による差が最も分かりやすいポイントでもあります。

4. 重さは体に合っているか

エレキギターは3kg台後半から4kg台のモデルが多く、同じ形でも個体差があります。立って練習する予定がある方や体格が小柄な方は、必ずストラップを掛けて数分構えてみてください。肩に食い込む重さだと、練習が苦痛になります。

5. 買った後の調整をしてもらえるか

ギターは湿度や気温で状態が変わるため、買って終わりではありません。購入後の調整(セットアップ)に対応してくれる店で買うと、その後が楽になります。初めての1本に限っては、相談できる相手がいる店頭購入をおすすめします。

講師からのアドバイス|タイプ選びで迷ったら

エレキギターには大きく分けていくつかの定番タイプがあります。細かなスペック比較より、次の観点で考えると迷いません。

  • ストラトタイプ……ボディが体に沿う形で、軽めの個体が多い。音の幅が広く、ジャンルを選ばない。迷ったらここから
  • レスポールタイプ……太く歪ませた音が得意。ロック志向の方に。重量がある個体が多い点だけ注意
  • テレキャスタータイプ……構造がシンプルで芯のある音。カッティングや歌もの伴奏と相性がいい

レッスンで「どれを買えばいいですか」と聞かれたとき、私が必ず返すのは「好きなギタリストは誰ですか」という質問です。憧れの人が使っているタイプを選ぶと、練習のモチベーションがまったく違います。音の細かい違いは、正直なところ弾き込んでいくうちに分かってくるものです。最初の段階で完璧な理屈をそろえる必要はありません。

なお「初心者セット」で一式そろえる方法もありますが、付属のアンプやチューナーは価格を抑えるために簡略化されていることが多く、結局買い直しになるケースをよく見ます。本体とアンプは別々に選んだほうが、総額が同じでも満足度は高くなります。

まとめ

初心者向けエレキギター選びの要点をまとめます。本体は3万〜5万円程度を基準にし、周辺機器に2万〜3万円程度を確保する。品質ラインを満たした中から、見た目の好みで選ぶ。店頭ではネックの反り・弦高・フレットの端・重さを確認し、購入後の調整に対応してくれる店で買う。この4点を押さえておけば、大きく外すことはありません。

そして最後にひとつ。上達を決めるのは買った後にどう練習するかです。最初の数ヶ月で正しいフォームと練習手順を身につけられるかどうかで、その後の伸び方はまったく変わります。「自分で選ぶ自信がない」「買ったけれど正しく弾けているか分からない」という段階でしたら、選ぶところから一緒に考えることもできます。

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