ノイズゲートとは、設定した音量より小さい音が入ってきたときに、音の通り道を閉じてノイズを消すエフェクターです。
「ジー」「サー」という持続的なノイズを、弾いていない時間だけ止める役割を持ちます。
ノイズそのものを取り除く装置ではないため、まずはノイズの発生源を減らし、それでも残る分に使うのが正しい順番です。
レッスンでも「自宅で弾くとノイズがひどい」という相談は多く、その大半はノイズゲートを買う前に解決できます。この記事では、ノイズゲートの仕組みと設定の考え方、そして買う前に確認すべきことを解説します。
ノイズゲートとは|役割と仕組み
エレキギターの信号経路には、演奏していないときでも微弱な電気的ノイズが流れ続けています。アンプで歪ませると、この小さなノイズも一緒に増幅されるため、弾いていない間の「ジー」という音が目立つようになります。
ノイズゲートは、この状況に対して「音量の門(ゲート)」を置きます。入力された音の大きさを常に監視し、あらかじめ決めた基準(スレッショルド)より大きければ門を開けて音を通し、小さければ門を閉じて音を止めます。
ノイズを「消す」のではなく「遮る」
ここが誤解されやすい点です。ノイズゲートは、ノイズ成分だけを選んで取り除いているわけではありません。音量が小さい区間をまるごと無音にしているだけです。
そのため、弾いている最中——つまり門が開いている間は、ノイズもそのまま通過しています。演奏音に紛れて聞こえにくくなっているだけです。「弾いていない時間の静けさ」を作る装置だと考えると、期待とのズレが起きません。
主なつまみの意味
- THRESHOLD(スレッショルド):門が開く音量の基準。上げるほど小さい音が通らなくなり、ノイズは消えますが演奏の余韻も切れやすくなります
- DECAY/RELEASE:門が閉じるまでの速さ。速いほどノイズは残りませんが、音がブツッと途切れる感じが出ます
- ATTACK:門が開く速さ。速いほど弾き始めの反応が良くなります(機種によっては非搭載)
実質的に調整するのはTHRESHOLDとDECAYの2つで、この2つの関係が使い心地のほとんどを決めます。
ノイズゲートの使い方|設定の手順
設定は、次の順番で進めると迷いません。
- 先にアンプとエフェクターの音を決める:歪みの量が変わるとノイズの量も変わるため、音作りを終えてから設定します
- THRESHOLDを最小にする:まったく効いていない状態から始めます
- 弾かずに手を弦から離し、THRESHOLDを少しずつ上げる:ノイズがちょうど消える位置で止めます
- 実際にフレーズを弾いて確認する:ロングトーンの終わりが不自然に切れないかを聴きます
- 切れるようならTHRESHOLDを少し戻す:ノイズが完全には消えなくても、演奏が自然なほうを優先します
ポイントは3の「ちょうど消える位置」です。効きを強くするほど良い、というものではありません。必要以上に上げると、弱く弾いた音や余韻が門に引っかかり、演奏が痩せて聞こえます。
つなぐ位置
基本は歪み系エフェクターの後ろです。歪みがノイズを増幅するため、増幅されたあとで遮るほうが効果がはっきりします。歪みの前に置くと、ゲートを通ったあとで再びノイズが増幅されてしまいます。
ディレイやリバーブなど、音を伸ばす系のエフェクターより前に置くのも重要です。後ろに置くと、伸びている残響そのものをゲートが切ってしまいます。
買う前に試すべきノイズ対策
自宅練習のノイズは、機材を買わずに減らせることが多くあります。ノイズゲートは「減らしきったあとに残る分」に使う道具なので、先に次を確認してください。
立つ向きを変える
シングルコイルのピックアップは、外部の電磁波を拾いやすい構造です。パソコンのディスプレイ、電源タップ、蛍光灯、Wi-Fiルーターなどの近くでは特に顕著に出ます。その場で体の向きを90度変えるだけでノイズが激減することは珍しくありません。まずこれを試してください。
機材の位置と電源を見直す
- アンプをパソコンやモニターから離す:数十センチ動かすだけで変わることがあります
- 電源タップを分ける:他の家電と同じタップから取っているとノイズが乗りやすくなります
- シールドを見直す:古いシールドや断線しかけのケーブルは、ノイズの大きな原因になります
- アダプターの品質を確認する:エフェクター用の電源は、機器に合ったものを使うのが基本です
歪みの量を見直す
もっとも効果が大きく、そして見落とされやすい対策です。ノイズは歪みの量に比例して増えます。自宅で必要以上に深く歪ませているケースは多く、GAINを少し下げるだけでノイズが半分近くまで減ることもあります。しかも歪みを浅くすると演奏の粗が見えるので、練習の質も同時に上がります。
左手のミュートを見直す
「ノイズ」だと思っていた音が、実は触れている弦が共鳴して鳴っている音だったというケースもよくあります。これは機材では解決せず、押さえていない弦に指を軽く触れる、いわゆるミュートの技術で止めます。単音フレーズを弾いたときにだけ雑音が増えるなら、機材ではなく手の問題である可能性が高いです。
よくある失敗と注意点
効きを強くしすぎて演奏が不自然になる
もっとも多い失敗です。THRESHOLDを上げきると確かに無音区間は静かになりますが、ロングトーンの余韻が途中で消え、弱く弾いた音が鳴らなくなります。演奏が「ブツブツ切れる」印象になったら、確実に上げすぎです。ノイズが少し残っていても、演奏が自然なほうを選んでください。
ミュートの練習をやめてしまう
ゲートが雑音を消してくれるため、余計な弦が鳴っていても気づかなくなります。しかしミュートは、レコーディングでも人と合わせるときも必要になる基礎技術です。機材で隠せる状態に慣れてしまうと、後から身につけ直すのに時間がかかります。ゲートを切った状態で練習する時間を、意識的に残しておくことをおすすめします。
クリーンでも常時オンにしてしまう
歪ませないクリーントーンでは、そもそもノイズがほとんど増幅されません。この状態でゲートをかけると、得られるものはなく、音の減衰だけが不自然になります。歪ませたときだけ使うという切り分けができると、音のクオリティを落とさずに済みます。
よくある質問(FAQ)
初心者でもノイズゲートは必要ですか?
優先度は高くありません。自宅練習で気になるノイズの多くは、立ち位置の変更、電源の見直し、歪みの量を下げる、この3つで十分に減ります。それでも残るノイズが練習の妨げになっている場合や、深く歪ませる音楽をやりたい場合には検討する価値があります。エフェクターを買う順番としては、まず自分の目標の音に直接必要なもの(歪み系など)を優先するほうが、上達の実感につながりやすいと思います。
ノイズゲートを使うと音は変わりますか?
設定が適切であれば、弾いている間の音そのものは大きくは変わりません。変わるのは音の「切れ際」です。余韻が自然に消えていく部分をゲートが遮るため、設定が強いと減衰が急になります。逆に言えば、余韻の消え方に違和感がなければ設定は適切だと判断できます。音色が痩せたと感じる場合は、ゲートよりTHRESHOLDの設定を疑ってください。
アンプの内蔵ノイズリダクションとは違うものですか?
機能としては近いものです。デジタル系のアンプやマルチエフェクターには、同じ考え方の機能が最初から入っていることが多くあります。すでに手元の機材に入っているなら、まずそれで足りるかを試してください。設定項目が簡略化されている場合もありますが、効きの強さを調整するという基本は同じです。追加でペダルを買うのは、内蔵機能では対応しきれないと分かってからで遅くありません。
まとめ
- ノイズゲートは、設定した音量より小さい音を遮って無音にするエフェクター
- ノイズ成分を選んで消しているのではなく、音量の小さい区間を止めているだけ
- 調整の中心はTHRESHOLD(門が開く基準)とDECAY(閉じる速さ)の2つ
- つなぐ位置は歪み系の後ろ、ディレイ・リバーブより前が基本
- 買う前に、立ち位置・電源・シールド・歪みの量・左手のミュートを見直す
- 効きを強くしすぎると余韻が切れる。ノイズが少し残っても自然な演奏を優先する
ノイズは、機材で消す前に「なぜ出ているか」を切り分ける——この順番を守るだけで、無駄な出費も遠回りも減らせます。
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