「弦を替えたばかりなのに、弾いているうちにチューニングがどんどん下がる」「弦交換のたびに、ペグに何回巻けばいいのか分からない」——こうした悩みを調べていると、ロック式ペグという言葉を目にすることがあります。

結論から言うと、①ロック式ペグは、ペグの内部で弦を挟んで固定するしくみのペグ ②巻き数が少なくて済むため、巻き部分の滑りによるチューニングの狂いを抑え、弦交換も速くなる ③ただし「すべての狂い」を防ぐものではなく、初心者はまず普通のペグで正しい張り方を覚えるのが先——この3点を押さえておけば、交換すべきかどうかの判断に迷いにくくなります。

この記事では、ロック式ペグの役割と仕組み、普通のペグとの違い、弦の張り方の手順、交換を考えるときのポイント、初心者がやりがちな失敗までを、東京・新宿エリアでレッスンをしている現役プロ講師の視点で順番に解説します。

ロック式ペグとは(役割と仕組み)

ペグ(糸巻き)は、弦を巻き取って張りの強さを調整し、音の高さを合わせるためのパーツです。ロック式ペグは、このペグに弦をその場で固定する「ロック機構」を加えたもので、ロッキングチューナーとも呼ばれます。エレキギターで使われることが多く、アコースティックギター用の製品もあります。

普通のペグとの違い

普通のペグは、弦をポスト(弦を巻き付ける軸)に何周か巻き付け、弦どうしが重なって押さえ合う摩擦で固定します。巻き数が少なすぎると滑りやすく、多すぎると巻いた部分が締まっていくまでに時間がかかり、どちらもチューニングが落ち着かない原因になります。

ロック式ペグは、ポストの穴に通した弦を内部のピンなどで直接挟み込んで固定します。巻き付けによる摩擦に頼らないため、少ない巻き数でもしっかり止まるのが特徴です。

ロック機構の主なタイプ

  • 裏側のダイヤルで締めるタイプ:ペグの裏側(ヘッドの裏側)にあるダイヤルを手で回すと、ポストの中で弦が挟まれて固定されます。もっとも一般的な方式です。
  • つまみ側で固定するタイプ:つまみ部分の操作でロックがかかる方式です。ダイヤルが見えないので、見た目は普通のペグに近くなります。
  • 余った弦を自動で切るタイプ:ペグを回すと、固定と同時に余分な弦がカットされる方式です。ニッパーを使う手間が減ります。

方式によって操作は少しずつ違うので、実際に使うときは製品の説明書を確認してください。

チューニングが安定しやすい理由

  • 巻き部分の滑りやゆるみが起きにくい
  • 巻き数が少ないため、弾いているうちに巻いた部分が締まって音が下がる現象が起きにくい
  • 巻き方の個人差が出にくく、毎回同じ状態で弦を張れる

ロック式ペグの使い方・実践

ここでは、もっとも一般的な「裏側のダイヤルで締めるタイプ」を例に、弦を張る手順を紹介します。

弦を張る手順

  1. 古い弦を外す前に、チューニングを十分にゆるめて弦の張りをなくす
  2. ロック用のダイヤルをゆるめ、ポストの穴がふさがっていない状態にする
  3. ペグを回して、ポストの穴を弦が通る向き(ネックと平行な向き)にそろえる
  4. ブリッジ側から弦を張り、ポストの穴に通して、弦をまっすぐ軽く引っ張る
  5. 弦を押さえたまま、ダイヤルを指で締めてロックする
  6. ペグを回して音を上げていく。ポストに巻き付くのは1周前後が目安
  7. 弦を軽く引っ張ってなじませ、もう一度チューニングしてから、余った弦をニッパーで切る

巻き数は、製品の説明やヘッドの形によって推奨が変わることがあります。弦がナットの溝からポストに向かって、なるべくまっすぐ下向きに入る角度になっているかも、あわせて確認しておきましょう。

弦を外すときの注意

弦を外すときは、先にペグを回して弦を十分にゆるめてからロックを解除します。張ったままダイヤルをゆるめると、弦が急に跳ねてボディや手を傷つけるおそれがあります。

選び方と、練習での活かし方

交換を考えるときに確認すること

ロック式ペグは、今ついているペグと取り替えて使うのが一般的です。購入前には次の点を確認しておくと、取り付けで困りにくくなります。

  • 並び方:ヘッドの片側に6つ並ぶタイプか、左右に3つずつ並ぶタイプか
  • 取り付け穴の大きさ:今のペグの穴と、交換するペグの穴の大きさが合っているか
  • ネジの位置:固定用のネジ穴の位置が合うか、新しく開ける必要があるか
  • ポストの高さ:弦ごとにポストの高さを変えて、ナットでの角度を確保する仕様の製品もあります

価格はセットで数千円程度のものから、1万円を超えるものまで幅があります。穴を広げたりネジ穴を開け直したりする加工が必要になる場合は、無理に自分で作業せず、楽器店やリペアショップに相談するのが安心です。

練習での活かし方

チューニングが安定すると、「正しい音程の中で練習できる時間」が増えるのが一番のメリットです。弾いている途中で音が少しずつ下がっていくと、コードがきれいに響かず、自分の押さえ方が悪いのか、ギターの状態が悪いのかを判断しにくくなります。

ただし、チューニングの狂いの多くは、普通のペグでも弦の通し方・巻き数・張ったあとのなじませ方を見直すだけで改善します。当教室のレッスンでも、「すぐチューニングが狂う」という相談をいただいたときは、まず弦の張り方を一緒に確認するところから始めています。パーツ交換を考えるのは、そのあとでも遅くありません。

よくある失敗と注意点

失敗1:ロックを締めずに弦を巻いてしまう

ロック式ペグは巻き数が少ない前提のパーツです。ロックをかけ忘れたまま少ない巻き数で張ると、普通のペグ以上に弦が滑りやすくなります。音を上げる前に、ダイヤルが締まっているかを必ず確認してください。

失敗2:工具で強く締めすぎる

ダイヤルは指で締めれば十分に固定されるように作られています。ペンチなどで無理に締めると、ネジ山や部品を傷める原因になります。

失敗3:張る前にポストの穴の向きをそろえていない

ポストの穴の向きがずれたまま弦を通すと、巻き数が想定より増えたり減ったりして、ロック式ペグの良さが活きません。弦を通す前に、穴をネックと平行にそろえておきましょう。

失敗4:チューニングの狂いがすべて直ると思い込む

ロック式ペグで防げるのは、ペグ部分の滑りによる狂いです。新しい弦の伸び、ナットの溝での引っかかり、アームの使用、温度や湿度の変化による狂いは残ります。交換しても改善しない場合は、ほかの原因を順に確認してください。

失敗5:サイズを確認せずに買ってしまう

取り付け穴の大きさやネジの位置が合わないと、そのままでは付けられません。購入前に、今のペグの並び方と穴のサイズを確認しておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 初心者でもロック式ペグに交換したほうがいいですか?

必須ではありません。普通のペグでも、弦を正しい向きで通し、適切な回数だけ巻いて、張ったあとに弦をなじませれば、チューニングは十分安定します。まずは基本の張り方を身につけ、それでも巻き部分の滑りで狂うと感じたときや、弦交換をもっと手早くしたいときに検討すると無駄がありません。

Q2. ロック式ペグにすればチューニングは狂わなくなりますか?

狂いにくくはなりますが、狂わなくなるわけではありません。ロック式ペグが防げるのは、ペグに巻いた部分の滑りやゆるみによる狂いです。張ったばかりの弦の伸び、ナットの溝での引っかかり、アームの使用、温度や湿度の変化による狂いは残るので、それぞれ別の対策が必要です。

Q3. ロック式ペグへの交換は自分でできますか?

今のペグと取り付け穴の大きさ、ネジの位置、並び方が合っている製品なら、ドライバーなど簡単な道具で交換できる場合もあります。ただし、穴を広げる、ネジ穴を開け直すといった加工が必要になると、ネックやヘッドを傷めるおそれがあります。少しでも不安があれば、楽器店やリペアショップに相談してください。

まとめ

ロック式ペグは、ペグの内部で弦を挟んで固定し、少ない巻き数でもチューニングを安定させるパーツです。巻き部分の滑りが起きにくくなり、弦交換も手早くできるようになります。

一方で、チューニングの狂いには弦の伸びやナット、温度・湿度などほかの原因もあり、ロック式ペグだけですべてが解決するわけではありません。初心者の方は、まず普通のペグで正しい弦の張り方を身につけ、そのうえで必要を感じたら、並び方や穴のサイズが合う製品への交換を検討しましょう。

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