フレットは、ギターのネックに等間隔で打ち込まれた金属の棒です。弦を押さえると、この金属に弦が触れて音の高さが決まります。押さえているのは指ですが、音の高さを決めているのは指ではなくフレットです。

この仕組みを知らないまま練習していると、「押さえているのに音が鳴らない」「ビリビリと雑音が出る」という壁で長く止まってしまいます。原因のほとんどは指の力不足ではなく、押さえる位置です。

この記事では、フレットの役割と数え方、そして初心者が最もつまずく「どこを押さえるか」を、レッスンで実際にお伝えしている順番で解説します。

フレットとは|音の高さを決めている金属の棒

ギターのネックの表面(指板)には、金属の棒が横方向に何本も埋め込まれています。これがフレットです。この金属で仕切られた一区画ぶんも、慣習的に「フレット」と呼びます。「3フレットを押さえる」と言うときは、この区画のことを指しています。

弦を押さえると、弦は指ではなく、押さえた位置のすぐ手前(ヘッド側ではなくブリッジ側)にあるフレットの上に乗ります。そこから先の長さだけが振動して、音が鳴ります。振動する弦が短くなるほど音は高くなるので、ブリッジ側(右利きなら右方向)に移動するほど音が高くなります。

フレットが1つ隣に動くと、音は半音上がります。これはギターという楽器の設計そのもので、どの弦でも共通です。ピアノで隣り合った鍵盤(白鍵と黒鍵を含めた隣同士)に移動するのと同じ変化だと考えてください。

フレットのないバイオリンなどでは、指を置く位置がわずかにずれるだけで音程が狂います。ギターはフレットがあるおかげで、区画内のどこを押さえてもほぼ同じ音程が出ます。初心者でも最初から音程の合った音が出せるのは、この仕組みのおかげです。

フレットの数え方|ヘッド側から1、2、3

数え方は簡単で、覚えることは1つだけです。

  • ヘッド(糸巻きのある側)に一番近い区画が「1フレット」
  • そこからブリッジ(ボディ側)に向かって、2フレット、3フレット……と増えていく
  • どこも押さえずに弾く状態は「0フレット」または開放弦と呼ぶ

本数は楽器によって違い、アコースティックギターならボディとの接続部分までで14前後、エレキギターは21〜24程度が一般的です。ハイポジション(数字の大きい側)まで使うかどうかは演奏スタイル次第なので、本数の多さが楽器の優劣を決めるわけではありません。

ポジションマークは数える手間を省くための目印

指板には、丸い点などの目印が付いています。これがポジションマークです。多くのギターでは3・5・7・9フレットに1つずつ、12フレットに2つ(または大きめのマーク)が入っています。

毎回1から数えていては演奏になりません。「マークのある場所は3・5・7・9、二重マークが12」と覚えて、そこを基準に前後1つ2つと数えるのが実用的なやり方です。7フレットを押さえるなら、1から数えるのではなく、3つ目のマークに直接指を持っていきます。

12フレットが特別扱いされているのには理由があります。ここは開放弦のちょうど1オクターブ上の音になる位置で、弦の長さが半分になる地点だからです。12フレットから先は、開放弦から始まる音の並びがそのまま繰り返されます。

TAB譜・コードダイアグラムとの対応

楽譜側の数字も、すべてこの数え方と一致しています。

  • TAB譜:線の上に書かれた数字が、そのままフレット番号です。「3」なら3フレットを押さえます。「0」は開放弦です
  • コードダイアグラム:縦線が弦、横線がフレットの仕切りで、上端が1フレット側です。押さえる場所に黒丸が置かれています

逆に言えば、フレットの数え方さえ押さえてしまえば、TAB譜もコードダイアグラムも読めるようになります。ここは最初の30分で必ず身につけておきたい部分です。

押さえる位置|「フレットの真上」ではなく「すぐ手前」

ここが、初心者が音を鳴らせない原因の大半を占める部分です。

正しい位置は、押さえたいフレットの、ブリッジ側の金属のすぐ手前(金属に触れるくらいの位置)です。3フレットを押さえるなら、3番目の金属棒のほぼ真横、わずかにヘッド寄りに指を置きます。区画の真ん中ではありません。

理由は単純で、弦をフレットに密着させるのに必要な力が、金属に近いほど小さくて済むからです。区画の真ん中を押さえると、同じ音を出すのに何倍もの力が必要になります。「指の力が足りない」と感じている方の多くは、力ではなく位置の問題です。

あわせて確認したいのが指の角度です。指を寝かせて押さえると、隣の弦に指の腹が触れて音を止めてしまいます。指先を立てて、弦に対してほぼ垂直に立てた指の先端で押さえると、隣の弦に触れません。爪が長いと物理的に立てられないので、押さえる側の手の爪は短く切っておいてください。

音が鳴らないときのチェック順

  1. フレットのすぐ手前を押さえているか:区画の真ん中になっていないか確認します。ここだけで解決することが非常に多いです
  2. 指が立っているか:隣の弦に触れていないか、1本ずつ弾いて確かめます
  3. 親指の位置:ネックの裏の中央あたりに置きます。親指が上からはみ出していると、他の指が立ちません
  4. それでも鳴らないなら力を抜いてみる:握り込みすぎると指が寝て、かえって鳴らなくなります

この順番で見ていくと、たいていは1か2で解決します。「もっと強く押さえる」は最後の手段で、最初に試すことではありません。

よくある失敗と注意点

フレットの真上を押さえてしまう

金属の真上に指を乗せると、弦が浮いて「プツッ」と詰まったような音になったり、音そのものが出なくなったりします。「真上」ではなく「すぐ手前」。この一語の差が結果を大きく変えます。

数え方を逆に覚えてしまう

ブリッジ側から数えてしまうと、TAB譜の数字がすべて食い違います。数えるのは必ずヘッド側からです。座って構えたときに、左手が伸びている先(右利きの場合)が1フレット側だと覚えておくと迷いません。

ビビリを全部フォームのせいにしてしまう

押さえ方を直しても、特定のフレットだけ「ビーン」と雑音が出続ける場合は、楽器側の状態が原因のこともあります。ネックの反り、フレットのすり減り、弦高の設定などです。これらは調整で直る範囲のことが多いので、自己流で削ったりせず、購入した楽器店や修理を扱う工房に相談してください。

指先の痛みで練習をやめてしまう

始めた最初の数週間、指先が痛くなるのは誰にでも起こることです。ただし、正しい位置を押さえていれば必要な力は小さく、痛みも軽くなります。痛みが強すぎると感じるときは、我慢する前に押さえる位置を疑ってみてください。1日15分でも続けていれば、指先の皮膚は自然に対応していきます。

よくある質問(FAQ)

フレットの数が多いギターのほうがいいのですか?

初心者のうちは違いを気にする必要はありません。ポップスや弾き語りで使う音のほとんどは12フレットより手前に収まっていて、21フレットでも24フレットでも弾ける曲は変わらないからです。数の多さが効いてくるのは、ハイポジションを多用するソロを弾くようになってからです。楽器選びでは、フレット数より弾きやすさや自分の好きな音のほうがはるかに重要です。

フレットの位置がだんだん狭くなっているのはなぜですか?

音の高さと弦の長さの関係が、一定の割合で縮んでいく形になっているからです。半音上がるごとに、振動する弦の長さは同じ「比率」で短くなります。同じ「長さ」ずつではないため、ブリッジに近づくほど間隔が詰まって見えます。12フレットで弦の長さがちょうど半分になるのも、この関係によるものです。演奏上は、ハイポジションほど指を置く幅が狭くなる、と体で覚えておけば十分です。

1フレット(ヘッド寄り)が特に押さえにくいのですが、私の手が小さいせいでしょうか?

手の大きさよりも、フレット幅と押さえ方の影響のほうが大きいです。ヘッド寄りはフレット間隔が最も広く、指を大きく開く必要があるうえ、弦の張力も強く感じられる場所です。ここが弾きにくいのは全員に共通することで、うまい人ほど無駄な力を使わずに処理しています。指を伸ばそうとせず、手首の角度とひじの位置で距離を作ると届きやすくなります。それでも苦しい場合は、フォームそのものを一度見てもらうのが早道です。

まとめ

  • フレットは音の高さを決める金属の棒。1つ隣に動くと半音変わる
  • 数え方はヘッド側から1、2、3。押さえない状態が開放弦(0)
  • ポジションマークは3・5・7・9、二重が12。数えずに目印から探す
  • 押さえる位置はフレットの真上ではなく、ブリッジ側の金属のすぐ手前
  • 音が鳴らないときは、力を強めるより先に「位置」と「指の角度」を確認する

フレットの数え方は5分で覚えられますが、「すぐ手前を、指を立てて押さえる」という感覚が身につくまでには少し時間がかかります。鏡やスマホのカメラで自分の左手を横から見てみると、自分では気づけなかった位置のずれがはっきり見えます。まずはそこから試してみてください。

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