「弾きたい曲のコード譜が見つからない」「耳コピに挑戦したけれど、何から聞き取ればいいのかわからない」——そんな経験はないでしょうか。耳コピは特別な才能が必要なものと思われがちですが、実際には決まった手順で音を絞り込んでいく作業です。

結論から言うと、①最初に聞き取るのはコードではなく「キー」 ②コードは、いちばん低い音(ベース音)から探すと見つけやすい ③キーがわかれば使われるコードの候補は絞れるので、当てずっぽうで探す必要はない——この3点が押さえどころです。

この記事では、耳コピの仕組みから、キーとコードを聞き取る具体的な手順、練習の進め方、よくある失敗までを、東京・新宿エリアでレッスンをしている現役プロ講師の視点で解説します。

耳コピとは(役割と仕組み)

楽譜を使わず、音源から音を聞き取ること

耳コピとは、楽譜やコード譜を見ずに、音源を聴いてメロディやコード、フレーズを聞き取り、自分の楽器で再現することです。聞き取った内容を譜面に書き起こす作業は「採譜」とも呼ばれます。

必要なのは絶対音感ではなく「相対音感」

耳コピに必要なのは、音の高さを単独で言い当てる絶対音感ではありません。基準になる音に対して、ほかの音がどれくらい離れているかを感じ取る相対音感です。相対音感は、大人になってからでも練習で伸ばしていけます。

音と音の距離は「度数」で表します。度数の考え方は度数の記事で解説しています。耳コピは、この度数の感覚を実際の曲で確かめていく作業とも言えます。

理論を知っていると、候補を絞り込める

12種類の音とたくさんのコードの中から、手がかりなしで正解を探すのは大変です。しかし、多くのポピュラー音楽は、キーの音で作られる7つのコード(ダイアトニックコード)を中心にできています。キーさえわかれば、「このあたりのコードだろう」と見当をつけてから確かめられるため、耳コピの負担が大きく減ります。

使い方・実践|キーとコードを聞き取る5つの手順

手順1:曲の構成をつかむ

いきなり音を探し始めず、まずは曲を通して聴き、イントロ・Aメロ・Bメロ・サビといった構成を書き出します。同じコード進行が繰り返されている箇所に気づければ、聞き取る量はぐっと少なくなります。最初はサビだけ、あるいは4小節だけと、範囲を小さく区切るのがコツです。

手順2:キーを見つける

曲に合わせて、ギターの単音を1つずつ鳴らしてみます。その中で、曲が終わったときに鳴らすと「落ち着いた」「ここが着地点だ」と感じる音が、キーの中心の音(主音)です。サビの最後や曲の終わりの音に注目すると見つけやすくなります。

主音が見つかったら、その音から始まるメジャースケールを曲に合わせて弾き、違和感なくなじむかを確かめます。明るい曲ならメジャーキー、もの悲しい雰囲気ならマイナーキーの可能性を考えます。キーの見つけ方はキーの記事でも詳しく解説しています。

手順3:ベース音を拾う

コードを聞き取るときは、まずいちばん低い音に耳を向けます。ベースは多くの場合、コードのルート(根音)を弾いているからです。6弦や5弦の単音で、ベースの動きをなぞるように音を探します。ベースの音が聞き取りにくいときは、ヘッドホンやイヤホンで聴くと低音が追いやすくなります。

手順4:メジャーかマイナーかを決める

ルートがわかったら、その音をルートにしたメジャーコードとマイナーコードを弾き比べ、音源に近いほうを選びます。ここで役立つのがダイアトニックコードの知識です。たとえばCメジャーキーなら、中心になるコードは次の7つです。

  • C・F・G(メジャーコード)
  • Dm・Em・Am(マイナーコード)
  • Bm(♭5)(登場する頻度は低め)

ベース音がレ(D)なら、まずDmを試す、という順番で確かめると効率的です。どうしても合わないときは、キーの外から借りてきたコードや、ベースがルート以外を弾く分数コードの可能性を考えます。

手順5:音源に合わせて弾いて確かめる

聞き取ったコードを、音源と一緒に弾いて確認します。合っていれば音源に溶け込み、違っていればどこかに濁りを感じます。違和感のある小節だけを繰り返し聴き、1つずつ直していきましょう。定番のコード進行を知っていると、「この流れはよくある形だ」と気づける場面も増えていきます。

選び方・練習での活かし方

最初の1曲はシンプルな曲を選ぶ

最初に取り組む曲は、テンポがゆったりで、楽器の数が少なく、コードの数が少ない曲がおすすめです。アコースティックギターの弾き語りなどは、コードの響きが聞き取りやすく、練習に向いています。

再生速度を落として、短く繰り返す

速くて聞き取れない箇所は、再生速度を落として聴きます。スマートフォンの音楽アプリや動画サービスには、再生速度を変えたり、区間を繰り返したりできる機能を持つものがあります。1〜2小節の短い区間を、何度も繰り返して聴くのが基本です。

メロディを歌ってから音を探す

聞き取りたい音を、まず声に出して歌ってみます。歌える音は、頭の中で高さを把握できている音です。歌った音をギターで探す、という順番にすると、やみくもに指板を探るより早く見つかります。

毎日少しずつ続ける

耳の力は、短い時間でも続けることで育ちます。1日に4小節だけでもかまいません。聞き取る→弾いて確かめる→答え合わせをするという流れを繰り返すうちに、聞き取れる音が少しずつ増えていきます。

よくある失敗と注意点

いきなり1曲まるごと取ろうとする

最初から1曲すべてを耳コピしようとすると、途中で疲れてしまいがちです。まずはサビのコード進行だけ、イントロのフレーズだけ、と範囲を絞り、小さな成功を積み重ねましょう。

キーを決めずにコードを探す

キーがわからないままコードを探すと、すべてのコードが候補になってしまいます。遠回りに見えても、先にキーを確かめるほうが、結果として早く正確に聞き取れます。

高い音ばかり聴いてしまう

人の耳は、メロディやギターの高い音に引っぱられやすいものです。コードを取るときは、意識して低音に耳を向けましょう。ベースの動きがわかるだけで、コード進行の大枠はつかめます。

最初から完璧を目指す

テンションや細かな響きまで最初から正確に取ろうとすると、先に進めなくなります。まずは「メジャーかマイナーか」のレベルで全体を取り、慣れてきたらセブンスなどの細かい響きを足していく、という順番で十分です。

チューニングを確認していない

ギターのチューニングがずれていると、正しい音を弾いても音源と合いません。耳コピを始める前に、必ずチューニングを確認しましょう。曲によっては、全体を半音下げて演奏しているものや、カポタストを使っているものもあります。

よくある質問(FAQ)

絶対音感がなくても耳コピはできますか?

できます。耳コピに必要なのは、基準の音からの距離を感じ取る相対音感です。相対音感は、音を聞き取って楽器で確かめる練習を続けることで、大人になってからでも伸ばしていけます。

コード譜サイトやアプリを見るのは、練習の妨げになりますか?

使い方しだいです。最初から答えを見てしまうと耳の練習にはなりませんが、自分で聞き取ったあとに答え合わせとして使うのは効果的です。違っていた箇所を聴き直すことで、聞き取りの精度が上がっていきます。

耳コピができるようになると、どんなメリットがありますか?

譜面のない曲を弾けるようになるだけでなく、音程やコードの響きを聞き分ける力が育ちます。その結果、アドリブや作曲、ほかの楽器と合わせるときの反応もよくなり、演奏全体の土台が安定します。

まとめ

耳コピは、キーを見つける→ベース音を拾う→メジャーかマイナーかを決める→合わせて確かめるという手順で、音の候補を絞り込んでいく作業です。特別な才能ではなく、手順と慣れで身についていきます。

まずは好きな曲のサビ4小節だけを選び、キーとベース音を探すところから始めてみてください。自分の耳で見つけたコードは、譜面で覚えたコードよりもずっと深く身につきます。

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